2025.05.26 物流から医療や翻訳まで 大学発スタートアップが多様な作業現場に新風注ぐ
Quarkの風間健人代表
AI(人工知能)の活用分野を開拓する大学発スタートアップの動きが活発化してきた。活用先は物流から医療現場までと多彩で、現実と仮想の両空間を融合する技術「XR(クロスリアリティー)」を組み合わせ倉庫でのピッキング作業を革新する企業も現れた。AIを社会課題の解決につなげるスタートアップの最前線に迫った。
東京都江東区の東京ビッグサイトで5月上旬に開かれた国内最大級のスタートアップ展示会「Startup JAPAN EXPO」。その会場に足を踏み入れると、AIやXRを駆使してピッキングを支援するシステムが存在感を放っていた。展示したのは、東京大発の「Quark(クォーク、東京都渋谷区)」だ。
システムの導入先は、組み立てなどの製造工程。具体的には、現場の棚に張り付けたラベルを、作業者が装着した眼鏡型端末「スマートグラス」が認識。こうした仕組みでピッキング対象を即座に認識することで、対象部品を探し出す手間が短縮できるようにする。
既にNTTなどの大手企業と協業しており、サービスの実装化が着々と進んでいる。会場でQuarkの風間健人代表は「エンジニアを育成し活躍する場を設けるきっかけとなり、ビジネスマンへのAI活用を促していきたい」と力を込めた。
一方、「言葉の壁を世界からなくすシステム」の普及を目指すスタートアップが、群馬大発の「C&T(前橋市)」だ。AIを用いる同時通訳サービス「UniTrans(ユニトランス)」を出品した。
同サービスは、医療現場で例えば、医師や看護師と患者のやり取りを効率化してくれる。売りは、ハンズフリー(手ぶら)で長い会話も瞬時に翻訳してくれる点だ。会話途中のボタン操作や、翻訳画面を見せ合うといった手間を省くことができる。
1時間に1.1万字の通訳が可能で、従来の通訳サービスの1.57倍の会話を実現できる。こうした強みを武器に、日本で働く外国人技能実習生とのコミュニケーションや、ホテルの受け付けなどに展開先を広げたい考えだ。
世界のスタートアップ関連情報の分析を支援する早稲田大発「Zuva(ズウバ、東京都新宿区)」のブースも目を引いた。
展示したのが、150万社以上の関連情報を蓄積するデータベース「ZUVA PRO MAX」だ。検索とAIレコメンド(推奨)機能で、有望なスタートアップを見つけることができる。
さらに同社のエキスパートが選ぶ最先端技術に加えて、海外の市場トレンドも把握できる。菊池慶輔代表は、「今後は、海外だけでなく、国内企業のデータベース作成にも力を入れたい」と強調。上場も視野に入れ、データベースを広げることに意欲を示した。