2025.08.26 カシオ・高野社長「種生まれ始めている」 新規事業てこに成長へ
新規事業の手ごたえを語る高野社長
カシオ計算機が4つの事業ポートフォリオを軸とした戦略で、2030年度に企業価値の最大化を目指している。26年度から新たな中期経営計画を始動させるために、事業部制の導入などこれまで構造改革を進めてきた。高野晋社長CEO(最高経営責任者)は「数字の世界で生きてきた。裏付けのないことは言わない」とし、30年度の目標値について明言を避けたが、AI(人工知能)ペットロボット「Moflin(モフリン)」といった新規事業の成長に期待感を示した。
カシオは、事業ポートフォリオを「成長候補」「成長」「課題」「成熟」の4つに分けた戦略を敷く。特に重視しているのが、成長候補に位置付けるモフリンや教育アプリを成長領域に引き上げることだ。モフリンはこれまで7000台を販売し、増産に向けた対応を進めているが、需要に対して生産が追い付かない状況が続く。
高野社長は「時計、教育を成長事業にし、モフリンといった新規事業の種も生まれ始めている」と強調。心の健康などにもつなげる「メンタルウェルネス」として、リカーリングモデルなど新たな展開も模索していく構えだ。
収益性に課題を残す電子ピアノなどを展開するサウンド事業も、新たな取り組みを推進して再成長を目指している。
26日には、動画配信者と視聴者を仲介するライブ配信スケジューラーサービス「Streamer Times(ストリーマータイムズ)」を発表。音楽や動画制作で効果音を活用するクリエイターに向けては、40万音以上を学習したAIが効果音を生成する「Waves Place(ウェイブス プレース)」を開発し、それぞれ27日から提供を開始することを明らかにした。こうしたクリエイターをターゲットに、サウンド事業の幅を広げたい考えだ。
カシオは26年3月期で売上高2700億円を計画している。営業利益は、トランプ関税による減益影響30億円を織り込み、5月公表値から8月に210億円へと下方修正したが、前年比では1.5倍近い伸びを見込んでいる。
今年2月には電子辞書の新規開発の中止を発表するなど選択と集中を進めてきたカシオ。研究開発機能を社長直下の組織体制にし、将来性を見据えた開発を進めつつ、足もとで育ちつつある新規事業の育成に取り組むなどで、成長軌道に乗ることを狙っている。