2025.09.01 パナソニックのA2W ドイツでA2W納入見学会 暖房能力の維持技術、タド社との連携強み
デザイン性が高い室外機
【アウクスブルク(ドイツ)=古賀和之】パナソニック 空質空調社は、欧州でヒートポンプ式温水給湯暖房機(エア・トゥ・ウオーター、A2W)を提供している。A2Wは化石燃料を用いる暖房機器よりも環境に配慮したシステムとして関心を集める。同社はドイツ・アウクスブルクで一般個人宅へのA2W納入見学会を8月28日(現地時間)に開催。ドイツの空調制御プラットフォーマー「tado°(タド)」のアプリを用いた管理システムの説明も行った。
A2Wは外気の熱を集めて温水をつくり出し、建物に循環させて暖房するシステム。化石燃料を使う暖房機器に比べてCO₂排出量を抑え、環境への負荷が少ない。同社のA2Wは、低外気温でも暖房能力を維持する独自技術「T-CAP」や、GWP(地球温暖化係数)が低い自然冷媒「R290」を採用しているのが強みだ。
見学会で訪れたのはアウクスブルクにある一戸建て住宅(地上2階、地下1階)で、オイルボイラーからA2Wに置き換えた。T-CAP、R290に加え、黒を基調とした室外機のデザイン性も決め手の一つとなったという。オーナーのクリストフ・ラウフマン氏は「CO₂、エネルギーの削減につながっており、総合的に見て非常に満足している」と話し、環境配慮への意識が高い。
ドイツではA2Wへの補助金は導入費用の30%が基本。そこに古いボイラーからの切り替えで20%、自然冷媒で5%が上乗せされ、最大55%となる。今回の案件は50%以上だった。同社の顧客でも古いボイラーからの切り替え、自然冷媒使用のケースが多いという。
この個人宅への設置は昨秋、施工者2人が3日で完了した。ドイツではA2Wへの置き換え案件が多く、施工期間は3~5日程度。同社はオプション品を用いた期間短縮の工夫も進めている。
ドイツは新築案件が少ないことから、置き換え案件を狙う。営業を担うのはパナソニックHVAC欧州。ドイツ、オーストリア、スイスにおける空調事業のシニアプランニングマネージャーを務める武田光夫氏は「エンドユーザーに近い、地元に根差した暖房インストローラー(施工・設置業者)にいかに当社製品を選んでいただくかが重要」と語る。
今回の個人宅ではタドの運営システムを導入している。スマートサーモスタット(天候や温度設定などに合わせてアプリなどで空調システムを制御する電子機器)の製造・販売を手掛けるタドは、IoTを活用して空調制御プラットフォームを欧州で展開。タド製のシステム、アプリを用いてラジエーターの温度を細かく制御できる。
空質空調社は暖房機器メーカーとして初めて、タドと資本業務提携契約を締結し、4月にタドに出資した。両社は製品やサービスの仕様を相互に開示。ソフトで高効率な運転制御を可能にするパナソニック製A2W専用の新機能を追加していく。
脱炭素社会の実現に向けた環境意識の高まりにより、中長期的な市場成長が見込まれる。武田氏は「有力なパートナーを増やし、シェアを獲得していきたい。タドとの連携、T-CAPなど製品も特長を打ち出し、営業体制を整えていく」とドイツでの営業・企画推進に意欲を示した。