2025.12.15 中国CATL、船舶向けエネルギー管理強化 港湾業務の排出ガスゼロへ

CATLの国内初の完全電動型観光船「Yujian 77」

 中国のCATL(寧徳時代新能源科技)は、事業分野を主力の自動車向け電池以外にも拡大し、排出ガスゼロの大型完全電動船舶や港湾設備を含めた電池サイクル全体をカバーする包括的なエネルギー管理事業を強化する。

 同事業は「Ship-Shore-Cloud戦略(SSC)」と呼ばれる取り組みで、来年以降3年以内の具体化を目指す。

 今回の戦略で掲げた「Ship」は、船舶に搭載されたエネルギーシステムの管理を表す。「Shore」は、港湾・陸上の充電インフラやエネルギー供給・管理システム、「Cloud」は電池の状態監視やデータ分析、遠隔管理などを行うクラウドベースのプラットフォームを指す。つまり、港湾施設やクラウド技術と連携することで、船舶・港湾関連のエネルギー利用の最適化や持続可能な運用を目指すというのが基本方針だ。

 従来の船舶・港湾業務は、多くの企業が携わる複雑な構造のため、ゼロエミッションを実現することが困難とされていた。さらに道路輸送関連の技術を、船舶関連分野に移管することは容易ではない。高多湿で塩分の含んだしぶきに加えて、長時間の運航や高出力電力の必要性なども陸上輸送と大きく異なるためという。

 2日から4日間、上海で開催されたイベント「Marintec China」で同社の海洋事業部門「CAEV」の責任者Su Yi(スー・イー)氏は「当社の海洋事業は河川、湖、沿岸で既に始まっているが、現在ではより高水圧、低温、長時間航行など陸上や沿岸と大きく条件が異なる深海環境を目指して動き出している。将来的には3年以内に完全な電動船を公海で見せたい」と説明。3年後をめどにSSC戦略を推進していく考えを示した。

 SSCでは、安全で安定した運行を確保するため、電池や推進力、インテリジェントナビシステムが船舶に搭載され、陸上では充電および電池交換ステーションが整備されている。CATLは、エネルギーコストやコストリスクが大幅に削減されるというメリットがあると説明している。スー・イーイー氏は電池にも触れ、長距離航海用の船舶にはリチウムイオン電池よりサイクル寿命の長いナトリウムイオン電池が適しているとの考えを示した。

 CATLは2017年に船舶事業に参入しており、これまでに福建省厦門(アモイ)湾で運航中の国内初の完全電動観光船「Yujian 77」やタグボートなど電動型船舶で900隻の納入実績があるという。

 排出ガスゼロを目指す港湾設備の電動化は、世界の運輸業界で注目。デンマークの海運大手マースクとCATLの協業の可能性が取り沙汰されている。公表はされていないものの、両社の連携に関する情報が断片的に浮上しているという。