2026.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】データセンター展望 AI需要で30年に5.7兆円へ 電力・冷却、地方分散と地域共生が焦点

シャープ堺工場跡地の電力・冷却設備を再利用して整備したKDDIの大阪堺データセンター=堺市堺区シャープ堺工場跡地の電力・冷却設備を再利用して整備したKDDIの大阪堺データセンター=堺市堺区

 生成AI(人工知能)の普及を背景に、データセンター(DC)の整備が加速している。高性能GPU(画像処理半導体)を大量に使うAI向けDCが投資をけん引し、国内市場は2030年に5兆円を超える見通しだ。一方、電力確保や高発熱サーバーの冷却、脱炭素、住民との合意形成が成長を左右する。DCはサーバー施設から、電力、通信、産業を結ぶ戦略インフラへ役割を広げている。

AI需要で30年5.7兆円へ
 電子情報技術産業協会(JEITA)によると、国内のDCサービス市場は2025年の4兆3453億円から、30年には5兆6540億円へ拡大する。世界市場も25年の8454億ドルから30年に1兆7200億ドルと2倍を超える。生成AIの学習・推論やクラウド、動画配信などの需要が押し上げる。GPUや冷却装置、サーバーなど関連製品の世界市場も30年に1兆6907億ドルと25年比約2.5倍に膨らむ。

 市場の変化を象徴するのが、KDDIが1月に稼働させた「大阪堺データセンター」だ。25年4月に取得したシャープ堺工場跡地の大規模な電力・冷却設備を再利用。KDDIが蓄積してきたDC構築の知見も生かし、半年で構築した。地上4階建てで延べ床面積は約5万7000 F。米半導体大手エヌビディアの「NVIDIA GB200 NVL72」などを導入し、生成AIの開発や企業向けGPUサービスに活用する。

 工場跡地は広い用地や大容量の受電・冷却設備を備え、AI向けDCの有力な立地候補になる。大阪堺DCは直接液体冷却(DLC)と空冷を組み合わせ、再生可能エネルギー由来の電力を100%使用する。最大100Gbpsの通信や閉域接続も備える。機密データを国内で保管・処理するソブリン性を確保し、製薬、製造、国産大規模言語モデル(LLM)の開発を支える。医療ビッグデータの分析など、産業課題への活用も始まる。

電力と冷却、制度対応が条件に
 AIサーバーは従来型より消費電力と発熱量が大きく、空冷だけでは対応しにくい。冷却水をサーバー内部へ送り、CPU(中央演算処理装置)やGPUから直接熱を取り除くDLCなど液冷の導入が進む。施設全体の効率を高め、限られた受電容量を計算処理へ振り向ける設計が欠かせない。

 電源整備との時間差も大きい。資源エネルギー庁によると、DCの建設には一般に1~2年程度、脱炭素電源の整備には1~15年程度かかる。需要が顕在化してからでは間に合わず、DC、電源、通信網を一体で計画する必要がある。

 制度面でも省エネ性能への要求が強まった。26年4月から対象事業者には電力使用量やPUE(電力使用効率)などの報告・公表を求める。既存施設を含む事業者平均では30年度までにPUEを1.4以下とする。29年度以降に新設する対象DCには、稼働から2年後にPUEを1.3以下とする基準を設けた。省エネ性能は投資判断を左右する競争条件になる。

 DCを電力系統の安定化に生かす動きも始まる。NTTデータは27年度から、無停電電源装置(UPS)と電気自動車(EV)のリユースバッテリーを使い、需給調整市場へ参入する計画だ。逼迫(ひっぱく)時に放電し、余裕がある時に充電する。30年までに最大50MWの調整力を提供し、電力の大口需要家だったDCが調整役も担う。

秋田・石狩で産業集積へ
 国内DCの約9割は東京圏と大阪圏に集中し、用地不足や送電制約が深刻になっている。政府は電力と通信を一体で整備する「ワット・ビット連携」を掲げ、脱炭素電源や送電網に余裕がある地域へDCを誘導する。光通信網を使い、遠隔地の計算資源を都市部から利用する構想だ。

 秋田県では、秋田市のエスツーと米スタートアップのビットグリットが、最大500MWのAI向けDCを建設する計画を進める。整備費は2兆円規模を見込み、30年代前半の稼働を目指す。秋田県沖の洋上風力など再エネを活用し、AIや自動運転、ドローン関連企業、研究人材の集積につなげる。県は国のGX戦略地域制度の1次審査を通過しており、電力インフラ整備への支援も期待される。

 北海道石狩市では、市とDC事業者、電力・通信事業者など11社が「石狩データセンターコンソーシアム」を設立した。電力・通信基盤、防災、人材育成、雇用、再エネの地産地消で連携し、関東、関西に次ぐ集積地を目指す。NTT-MEは約5万 Fの用地に最大14基のコンテナ型DCを整備し、早ければ27年2月に1基目を稼働させる計画だ。さくらインターネットなどの整備も進み、再エネを生かしたDC群が形成されつつある。

 エクイニクス・ジャパン、NTT東日本、さくらインターネットは、石狩DCと東京の拠点を低遅延・大容量のIOWN APNで結ぶ概念実証を26年後半から行う方向で検討する。AIの学習や推論を地域間で分担し、地方の電力と計算資源を都市部と一体で使う。地方分散は施設建設にとどまらず、通信、電力、人材、関連企業を束ねた産業集積へ進みつつある。

地域共生も立地条件に
 建設の広がりに伴い、地域との摩擦も顕在化した。千葉県印西市や白井市では、DC建設を巡り住民が提訴。排熱や騒音、日照、景観への影響、計画段階の説明不足に懸念が上がった。建築基準法上の位置付けが明確でないなど、制度面の課題も残る。

 日本データセンター協会は5月、「データセンター地域共生ガイドライン」を策定した。立地検討の早い段階から自治体や住民へ情報を伝え、排熱、騒音、交通、景観について丁寧な対話を求める。相談窓口を設け、雇用創出や防災、ICT教育を通じて地域へ利益を還元する視点も示した。

 AI時代のDC整備は、需要があるだけでは進まない。電力、通信、冷却、脱炭素を一体で設計し、地域の理解を得て長期運用できるかが問われる。都市部の既存資産活用と地方の産業集積を両輪に、日本のデジタル競争力を支える基盤づくりが本格化する。