2026.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】セキュリティー展望㊦ AIエージェント、攻撃対象に利用状況と権限管理が急務
フィジカルAIにも防御広がる
生成AI(人工知能)の進化が、サイバー攻撃と防御の双方を変えている。巧妙なフィッシングや攻撃手順の自動化を助ける一方、防御側も脆弱(ぜいじゃく=ルビ)性の発見やログ分析にAIを使う。自律的に業務を進めるAIエージェントも社内システムやデータへ接続し、新たな攻撃対象になり始めた。企業には「どのAIが、どこで、どの権限を使っているか」を把握し、AIのライフサイクル全体を守る対策が求められる。
AIリスク、初の3位
情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が組織向けの3位に初めて入った。攻撃者は生成AIで自然な日本語のメールや不正プログラムを作り、脆弱性の探索から侵入後の作業まで効率化する。防御側も大量の警告から重大な脅威を絞り込むなどAI活用を急ぐ。AIを巡る攻防はセキュリティーの中核へ移った。
米アンソロピックのAIモデル「Claude Mythos Preview(クロード・ミュトス・プレビュー)」は、未知の脆弱性を発見、検証する高い能力を示した。同社は防御目的に利用を限定し、約50社・団体が参加する「Project Glasswing(プロジェクト・グラスウイング)」で活用する。参加組織は1カ月で重要度が高い脆弱性を1万件以上発見した。防御力を高める半面、同様の能力が攻撃に悪用されるリスクもある。
従業員とソフトの両面
トレンドマイクロは法人向けブランド「TrendAI(トレンドAI)」を立ち上げ、脆弱性やAIの利用状況の可視化から対応の優先順位付け、防御まで一体で支援する。Anthropic、米OpenAI(オープンAI)、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)などとの連携も強め、Project Glasswingにも参加した。
最高プラットフォーム責任者兼最高TrendAI事業責任者のレイチェル・ジン氏は、AIエージェントは従業員とソフトウエアの二つの側面を持つと指摘する。ジン氏は、AIによるコードのコミット数が25年の10億件から26年に140億件超へ増えるとの予測を紹介した。許可を得ずに使われる「シャドーAI」も含め、モデル、接続先、扱うデータ、実行権限を監視する必要がある。
リスクはデジタル空間にとどまらない。同社子会社のVicOne(ヴィックワン)は、ロボットや機械を自律制御するフィジカルAI向けの対策を進める。サイバー攻撃でロボットの制御が乗っ取られるデモも示した。AIが工場や物流、社会インフラと結び付くほど、誤作動や停止が現実世界の安全に直結する。AIとOTのセキュリティーを一体で設計する必要性が増す。
AIへの信頼、攻撃の入り口に
個人を狙う手口でもAIへの信頼が逆手に取られる。トレンドマイクロは、警視庁をかたる偽サイトにビデオ通話を組み込み、警察官による取り調べを演出する手口を確認した。生成AIの回答が偽サイトへ利用者を導く事例や、見えない指示でAIショッピングエージェントの予算や購入先を変える攻撃も実証した。
同社の調査で、AIによる詐欺やディープフェイクを「自信を持って見破れる」と答えた人は8.5%にとどまった。AIの回答を無条件に信用せず、公式アプリや別経路で確認することが欠かせない。パスキーや多要素認証を使い、人とAIに必要最小限の権限だけを与える。AIを安全に使うための統治と監視が、活用拡大の前提となる。







