2020.07.30 【電子部品技術総合特集】京セラ稲垣正祥執行役員上席研究開発本部長
稲垣 執行役員上席
〝幕の内弁当〟を作る
京セラは、創業者の稲盛和夫名誉会長の「人の通らない道を自ら進んで切り拓いていく開拓者であれ。次にやりたいことは私たちには決してできないと人から言われたものだ」を研究開発でも実践している。
稲垣正祥執行役員上席研究開発本部長は「素材、部品から機器、ソリューションに至るまで上流から下流まで手がけ、重点分野も情報通信、車載・モビリティ、環境・エネルギー、医療・ヘルスケア、文化・生活の面的広がりのある多角化を生かすのが研究開発の勝ち筋だ。私はこれを幕の内弁当と言っている。運動会の時の弁当、歌舞伎を観る時の弁当など、マーケットニーズに合わせて社内外のものを組み合わせて、おいしい幕の内弁当を作る。これができるのが当社の特徴であり、強みだ」と言う。
この1年間でもスタートアップ企業のAuB(オーブ)、マサチューセッツ工科大学発の24Mテクノロジーズ社、慶應義塾大学SFC研究所、東京医科歯科大学、奈良県立医科大学、ライオン/ソニー、JR東日本、横浜市と〝幕の内弁当〟の共同開発や実証実験を実施。24Mテクノロジーズ社と共同開発したクレイ型リチウムイオン電池は住宅蓄電池システム用を近く量産する。
ライオン/ソニーとのブラシを歯に当てると音楽が聴こえる仕上げ磨き専用ハブラシも量産準備に入った。
稲垣執行役員上席は「いろんな素材を組み合わせて幕の内弁当を作っていくのが勝ち筋と思う。宇宙にはセラミック材料、光学技術、通信技術が使え、AI(人工知能)、量子コンピュータは材料シミュレーションや走行経路探索を試しながら新しい使い道を探っている。ドローンも物流やインフラ点検などを見据えてスタートアップ企業に出資して一緒に開発を進めている。新型コロナ感染拡大前は一つずつ着実にやろうとしてきたが、新型コロナ禍で不連続の変化が起こっている。当社が得意な〝モノ〟ビジネスの強みを生かした上での〝コト〟ビジネス、つまりモノ×コトの取り組みが大切になる。あまり強くないコトはオープンイノベーションで外部と連携して強くしていく」と説明する。
けいはんなリサーチセンター(京都府精華町)でモノ、みなとみらいリサーチセンター(横浜市西区)でコトの研究開発を強化している。
北米、欧州、中国の研究開発拠点づくりを検討する時期にあるとみる。