2020.09.11 【中部産業特集】中部の製造業、生産に下げ止まり感 次世代自動車や5G向け開発に力

中部製造業の生産をリードするトヨタの先端自動車

次世代モビリティを支える自動運転車次世代モビリティを支える自動運転車

 中部の製造業は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で景況感の悪化が続いている中、輸送機械、電子部品・デバイス、プラスチック製品などの上昇によって、生産は下げ止まりの動きが出てきた。愛知県の有力企業は、自動運転車や燃料電池車、電気自動車などの次世代自動車向けに、AI(人工知能)やIoTなど最新技術を生かした生産技術投資や研究開発投資を行っており、大学との産学連携によるモビリティ製品の開発に注力する動きも見られる。

 中部経済産業局が8月19日に発表した管内(愛知、岐阜、三重、石川、富山)の総合経済動向によると、輸送機械の生産は、乗用車および自動車部品に下げ止まりの動きが見られる。生産用機械の生産は、金属工作機械が国内向け、海外向けともに大幅に減少している。

集積回路持ち直し

 電子部品・デバイスの生産は、集積回路が記憶装置のSSD(ソリッドステートドライブ)向けを中心に緩やかに持ち直している。液晶素子はスマートフォン向けを中心に低水準で推移している。

 ファインセラミックスの生産は弱い動きとなっている。触媒担体・セラミックフィルタは自動車向けを中心に、国内向け、海外向けともに減少している。

 愛知県の有力企業は、コネクテッドカー、自動運転、カーシェアリング、電気自動車のCASEやMaaS向けの次世代モビリティなど、次世代自動車や第5世代高速通信規格5G向けリチウムイオン電池等、次世代電子部品向けの研究開発に積極的に取り組んでいる。

 デンソーは今年4月、東京工業大学大岡山キャンパス内に「デンソーモビリティ協働研究拠点」を開設した。東京工業大学オープンイノベーション機構の支援のもと、CASE時代に向けた共同研究を加速している。デンソーグループのデンソーアイティーラボラトリも、未来のモビリティに向けたAI技術基盤の創出を目的に、東工大情報理工学院に「DENSO IT LAB認識・学習アルゴリズム共同研究講座」を設置している。

 ノリタケカンパニーリミテドは8月、東京ガス、東京ガスエンジニアリングソリューションズ(TGES)と、世界初のガス燃焼式リチウムイオン電池電極材用連続焼成炉を共同開発し、販売を開始した。

 同製品は、ノリタケの焼成炉技術と東京ガス・TGESのガス燃焼技術の融合により生まれた製品で、最大40%のエネルギーコスト削減を実現する高効率な加熱装置。リチウムイオン電池電極材だけでなく、高温度での安定した熱処理が求められる自動車や5G向け電子部品などの用途にも応用でき、各種製品の加熱工程のエネルギーコスト削減、環境性向上に貢献する。

 トヨタグループの愛知製鋼は4月末から、岐阜工場(岐阜県各務原市)で、パワーカード用リードフレームの第2ラインを稼働している。HVやEVなど電気自動車には、モーターの電力制御を行うパワーカードが搭載され、リードフレームはパワーカードを構成する必要不可欠な放熱部品。電動化の加速度的な進化に対応するため、リードフレームを扱う電子部品事業を、スマートカンパニーの基幹事業の一つとして位置付けている。