2020.09.18 【ASEAN特集】タイ迅速対応で投資企業に安心感

ドゥアンジャイ・アッサワチンタット事務局長

 活発な企業投資、旺盛な消費、強固な輸出体制、魅力的な観光資源、強じんなサプライチェーン体制。タイはASEANでも理想的な投資対象国としての地位を高めつつある。

 産業面では科学、技術、革新、創造性を基盤にした価値経済へと国の産業構造を転換しようと、「タイランド4.0」と呼ばれる新経済モデルを打ち出している。

 比較的早期な時期にパンデミックに見舞われたものの政府の迅速な対策が奏功して経済・社会活動の回復は早く、投資企業に安心感を与えた。

 タイ投資委員会(BOI)のドゥアンジャイ・アッサワチンタット事務局長はコロナ禍でも投資企業のタイへの信頼度は変わらないと語る。

  今年上半期、国内の合計投資金額は電機・電子(E&E)分野が283億バーツ(約962億円)、次いで農業・食品加工153億バーツ、自動車135億バーツ、医療産業130億バーツの順。

 上半期の全産業の投資申請件数は7%増の754件。しかし申請総額はコロナの影響と投資規模の小型化で前年同期比17%減の1589億バーツ。

 一方で、外国からの直接投資(FDI)申請件数は5%増の459件、金額で759億バーツ。FDI金額の30%が日本からの投資でトップ、申請件数は99件だった。中国は2番目の95件、3番目がシンガポールの55件というのが、上半期のFDI投資申請の件数実績だ。

 タイで自動車産業が活発なことは知られている。コロナ禍とはいえ、電気自動車(EV)メーカーがポストコロナと消費者の省エネ志向を見据えてタイ進出をうかがっている点は特筆すべきだ、と同事務局長。

 タイにおけるサプライチェーンの強じん性もグローバル企業から評価されているため医療やバイオ関連の投資も期待できるという。

 タイが推進している投資推進策に「タイランド・プラス」がある。昨年から実施されたもので、投資を現実化させるため、従来とは別途に税の優遇策を新たに導入した。

 ポストコロナ時代において環境保護の意識を植え付け、全ての産業で環境に優しい投資を促進する経済政策「バイオ・循環型・グリーン」(BCG)経済も推進している。

 緊迫度を増す米中の貿易摩擦。米国は中国生産の製品輸入に気をとがらせている。グローバル企業にとって中国依存から転換して生産拠点の再配置を迫られている。

 こうした中でタイ政府は、大規模投資プロジェクトに対し大幅減税や減免措置期間の延長策を新しく打ち出し、外国企業の誘致に懸命になっている。