2021.01.29 【水晶デバイス特集】中長期に向けた戦略を強化グローバルでの需要期待

 水晶デバイスメーカー各社は、中長期の成長に向けた戦略を強化している。第5世代高速通信規格5Gの本格化や、ADAS/自動運転技術の高度化、IoT関連市場の拡大などが進む中で、水晶デバイスは、今後もグローバルでの需要増大が期待されている。各社は、次世代ニーズに向けたR&D推進やグローバルでの営業・マーケティング活動を強化することで、今後も中長期での事業拡大を目指す。

 水晶デバイスは、あらゆる電子機器に搭載され、機器の正確な動作をサポートする基幹部品として重要な鍵を握っている。

 水晶デバイスの需要は、ここ数年、自動車とスマートフォンの生産台数増加と、機器の高性能化に伴う搭載点数増加などにより、拡大傾向が続いている。薄型テレビやデジタルカメラなどの民生機器向けの需要が伸び悩む中で、日系水晶デバイスメーカー各社は、通信や自動車を中心とする高付加価値分野に照準を合わせることで、持続的な成長を目指している。

 一方で、2010年代半ば以降はグローバル市場での過当競争などにより、水晶デバイスの価格下落が進み、各社の収益性が低下。さらに、スマホ市場の飽和や、18年後半以降の米中貿易摩擦の激化に伴う世界経済停滞や設備投資の需要減速が水晶デバイス需要にも大きな影響を与え、水晶デバイス業界での過剰な設備投資による在庫増の影響も相まって、18年後半から19年にかけて厳しい局面を迎えた。このため、水晶デバイス各社のグローバル生産体制見直しなどの構造改革も進展した。

 20年の水晶デバイス市場は、5Gの本格化に伴う5G端末や5G基地局関連需要の増大、自動車のADAS/自動運転化に伴う需要反転が期待されていたが、年初からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、20年前半は自動車や産機分野を中心に厳しい状況が続いた。

着実な成長見込む

 しかしながら、20年度の水晶デバイス需要は1Q(4-6月)を底に、2Q以降は需要が反転した。分野別では、5Gスマホや5G基地局需要の増大、20年夏場以降の自動車生産の回復が、2Qから3Qにかけての水晶デバイス市場を押し上げた。加えて、巣ごもり需要によるPC需要増大やワイヤレスヘッドホン需要なども、水晶デバイスの成長に貢献した。20年度トータルでの水晶デバイス需要は、19年度比では着実な成長が見込まれている。

 同時に、20年後半以降の水晶デバイス市場は、急激な需要回復に伴う需給バランスの良化もあって、製品単価も上昇傾向となっており、これまでの極端な価格下落傾向からはようやく反転の兆しを見せつつある。こうした価格是正の動きは、21年以降も引き続き進んでいくことが予想されている。

 21年の水晶デバイス市場は、新型コロナの感染再拡大などの懸念はあるものの、全体としては成長の継続が見込まれている。分野別では、世界的な5Gの普及本格化に伴う移動体通信端末向けや基地局向け需要の増加、ADAS/自動運転技術の高度化に伴う自動車での需要増大、光通信を含むインフラ需要増大、IoT関連市場の広がりなどが、水晶デバイスの高付加価値製品の需要拡大をけん引していくことが期待されている。

需要が高止まり

 特に自動車市場は、21年の年明け以降も、高止まりの需要状況が継続しており、当面は堅調な需要の推移が見込まれる。同時に、ADAS/自動運転技術をはじめとする自動車の電子化・高機能化の進展は、今後も自動車1台当たりの水晶振動子や水晶発振器の搭載点数を増大させ、中長期的に需要を押し上げていくことが期待されている。

 近年は、ADAS搭載車が従来の高級車から中・小型車にも広がりつつあり、車載カメラのハイエンド化と搭載点数増加、ミリ波レーダーやLiDARの搭載車種拡大などが、高品質で高性能な水晶デバイスの需要を押し上げていく。

 加えて、5Gの本格化は、スマートファクトリーやスマートシティー、メディカル/ヘルスケアなどの市場にも波及効果を与え、5Gを応用した新たなサービスやソリューションの創出につながることが予想されている。5Gの本格普及は、IoT関連での新市場の創出も促進する。20年代後半には、自動車での5Gサービス適用も本格化していく見通し。これらにより、高性能な水晶デバイスの新たな用途創出が進んでいくことが、期待されている。