2021.04.21 「建てるほどCO₂削減」、集合住宅でも大東建託が国内で初めてLCCM

LCCMの賃貸集合住宅の完成イメージ。大東建託が埼玉県草加市で建設を進めている

 賃貸住宅大手の大東建託(東京都港区)は、建設から居住、解体時までに排出する二酸化炭素(CO₂)を実質ゼロ以下にする賃貸集合住宅を、埼玉県草加市で建設している。戸建て住宅では広がり始めているが、集合住宅では国内で初めてとなる。6月末に完成する予定で、近く入居者の募集も始める。

 建設が進むのは「LCCM」と呼ばれる集合住宅。「ライフ」「サイクル」「カーボン」「マイナス」の頭文字を取り、建設から解体、廃棄までの建物のライフサイクルを通じて、省エネや太陽光発電などによりCO₂排出量が実質的にマイナスになるようにする。「建てれば建てるほど、CO₂が減っていく」(大東建託)ための技術や工夫を注ぎ込んでいる。

 2月に着工し、敷地約450平方メートルに、6世帯用の2階建てを建設中だ。1戸あたり家族2~3人が居住し、35年程度の入居期間を想定する。

太陽光発電の削減効果で相殺

 同社は、住宅分野の省エネ・省CO₂型の開発、普及を喫緊の課題としてとらえ、2017年11月に国内初となる国のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)基準を満たした賃貸集合住宅を静岡県で完成させた。

 ZEHは、居住時の間だけでエネルギー収支をプラスマイナスゼロにする考え方だが、LCCMは、居住時だけでなく、建物が建設される時や、劣化し解体する時にまで広げてCO₂排出を評価するため、「最高峰」(同社)の基準とされる。

 建設の際に多くのCO₂が排出されるのが、木材を乾燥させる製材工程。ここでは、エネルギー源にバイオマスなどの再エネを導入する。より低炭素な素材やリサイクル材なども多用し、なるべく排出量を抑える。

 建物自体は、断熱性の高い壁などを採用し、居住時の省エネ性能を高める一方で、屋根の形状を工夫して設置できる太陽光パネルを最大限にまで増やして、建物の発電効率を高める。草加市で建設を進める集合住宅の太陽光発電システムには、京セラ製の出力計32.4kWを搭載する。

 CO₂排出の抑制が難しい解体、廃棄時でも、なるべく最小限にするよう配慮。居住時に太陽光発電による削減効果を蓄積することで、建設時や廃棄時に出る排出量を相殺して、トータルでマイナスにしていく計画だ。

集合住宅でも基準を

 LCCMは、戸建て住宅では普及が始まっている。

 国は、LCCM住宅の基準を整備。国交省が18年度から助成制度を設け、全国に広めている。同省建築環境企画室によると、18年度には67件のプロジェクトで752戸、19年度には103件1386戸が補助対象となり、建設が進んだ。20年度でも38プロジェクトが助成を受けている。

 だが、集合住宅では、戸建て住宅に比べて、世帯が増加するのに対し、太陽光パネルの設置面積が減る傾向にあるなどして、LCCM住宅の認定を受けるハードルが高くなるという。

 同社は14年から、県立広島大学生命環境学科の小林謙介准教授らと共同して、建物がライフサイクルを通じて発生させる環境負荷量を評価する方法などについて、独自に研究を重ねてきた。蓄積したノウハウなどを生かし、今回、賃貸集合住宅として初めてLCCM住宅の認定を受けて、商品化に乗りだした。「手法の開発自体と建物を完成させることの、どちらも国内で初めて」(同社)という。

 ZEHでは、戸建て住宅とは別の基準が集合住宅に設けられているという。だが、LCCMでは、まだ明確な基準が集合住宅には設けられていない。同社は、先駆けて開発に取り組むことで、集合住宅でも国の基準の整備を求めていく考えだ。

 国交省建築環境企画室は、「集合住宅でもLCCMを求める動きが広がり必要が生じれば、基準の策定について検討していく」と話している。