2019.11.05 【ケーブルテレビ特集】FTTH化を強化 インターネット高速化に対応

光化に向け訴求するCATV機器メーカー(6月のケーブル技術ショーで)

 今年3月末時点で3055万世帯が加入する国内のケーブルテレビ(CATV)。この10年間で約1000万世帯増加している。CATV業界は伝送路の大容量・高速伝送のニーズに応えるため、FTTH(光)化を強化している。

HFCからFTTHへ

 CATVの業界団体日本ケーブルテレビ連盟によると、現在ではCATV業界の売上げの60%近くを通信サービスが占める。

 CATV加入者が通信事業者並みの大容量通信と高速化を求める以上、伝送路の高速化や強じん化に取り組むことが通信事業者との競争上、必要になっている。

 昨年12月1日、世界に先駆けて4K8K衛星放送の本放送が始まった。CATV業界の統一編成番組「ケーブル4K」だけでは加入者は満足しない。もっと多くの4K8Kチャンネルを見たいと思うだろう。

 また、加入者はネット接続の速度がもっと高速化されればと願うのは当然。

 インターネットの高速化や4K8Kなどの超高精細映像サービスを提供するだけでなく、CATV事業者には光化のほか、老朽化した幹線の更新や伝送路の二重化など、ネットワークの強じん化が求められているのが現状だ。

 CATV事業者が現在使用している伝送路は同軸ケーブルによる「同軸方式」、光ファイバによる「光回線方式」(FTTH)、同軸と光両方式併用の「ハイブリッド ファイバ コアキシャル方式」(HFC)がある。

 この三つの方式で現在最も多くの事業者が採用しているのがHFC。ケーブル局からの幹線部分を光ファイバ網で構築、途中から同軸ケーブルで各家庭まで線を引き込む方式のことだ。

 全ケーブルテレビ加入世帯のうち、ほかの方式との併用を含めれば、約70%が全面であれ一部であれ、HFC方式を導入していることになる。

 しかし今後、4K8K映像やインターネットの高速化を考えると、伝送容量が大きく、災害に強いFTTH方式のニーズが高まるのは必至といえる。

 FTTHによるケーブルテレビ加入世帯は全体の10%強というのが業界関係者の見方だが、この比率は今後急速に拡大しそうだ。

総務省、光化整備に19年度53億円

 4K8K、次世代高速通信規格5G、IoTなど、次世代技術の登場でFTTHへの期待は高まるばかり。

 このため、CATV各社はFTTH化を急ぐ。サービスエリアの広さや加入世帯数にもよるが、完全なFTTH化はCATV事業者にとって金銭面の負担は重い。敷設距離にもよるが、数年前には1社当たり50億円以上の負担という話が当然のように聞かれた。

 中小規模の多いCATV事業者には重い負担だが、地方自治体が出資しているCATV事業者には政府の支援がある。

 19年度、総務省は光伝送路設備などの光ファイバ整備に向けた「高度無線環境整備推進事業」として52億5000万円を予算化して、地域の課題解決に動き出した。九州では、天草ケーブルネットワークがこの事業の補助金交付を受けている。

 総務省では、災害対策としてCATV事業者の光ケーブル化の緊急対策事業に関する補助金交付も行っている。19年度は43億1000万円の予算。

 CATV局による伝送幹線の光化は着実に進展している。総務省によると、18年度末の幹線路全体の距離42万5104キロメートルに対する光ファイバ網は30万キロメートルで、幹線の光化率は70.7%。昨年度初めて70%台に乗ったことになる。

 こうした光化は通信サービスを強化するためには不可欠だ。しかし、莫大な投資額で敷設を進める通信事業者に、CATV事業者が直ちに対抗できるわけではない。

 そこで登場したのが、キャリアと呼ばれる自前で回線を保有する通信事業者との連携だ。

加速化する通信事業者との協業

 CATV事業者が光化費用を軽減するために、通信事業者から光回線を借りる動きも活発化。NTT、KDDI、ソフトバンクのキャリア3社が貸し出しを行っている。

 CATV事業者が通信事業者の光回線を「接続」または「卸役務」という形態での貸与を受け、通信サービスを提供するビジネスモデルが登場した。

 接続によって回線を借りる場合は、自己設置部分への設備投資が必要だが、その部分では自らの改良が可能という利点もある。

 通信事業者の回線を利用する卸役務は設備投資が不要。しかし、通信事業者が定める仕様に依存するため、価格面やサービス面での改善が困難という一面もある。

 自社構築による回線網の高速化は多額の設備投資が必要という面もあるが、CATV事業者は価格面やサービス面で自社の戦略を反映しやすい。

 CATV事業者はいずれの形態を採用するにもメリット・デメリットを考慮しながら展開することになるが、自社回線未設置地域でサービスを始めるケースでは他社の回線を借りる動きも出ている。

1Gから10G時代へ

 国内では現行のFTTHで1ギガbpsの伝送速度は珍しくない。

 今後、放送サービスのIP化が進み、ほかの通信パケットの影響を受けず安定したIP放送を行うには、十分な伝送容量が必要。

 一部のケーブルテレビ事業者は10ギガ対応のEPON装置を装備することがIP化に対応するのに有効と見ている。

 国内の一部CATV関連機器メーカーも、10G-EPON装置の供給を始めている。

 6月の「ケーブル技術ショー」でも10G関連製品の展示が目立った。CATV業界も着実に10G時代に移りつつある。