2021.07.02 【家電総合特集】エアコンWi-Fi内蔵進む、熱交換器の清潔性も訴求

流通側も主力商品と位置付け、エアコン売り場に工夫を凝らす

 コロナ禍で活況を呈したエアコン市場。2020年度は1000万台を超える出荷台数を記録し、過去最高となった。在宅勤務の定着をはじめ、自宅で過ごす時間が増えていることから、快適性を保つエアコンは今年度も夏場に向けて堅調な需要が見込める。

 国内の家電市場の伸びが期待しにくい中でこの10年余りの間、エアコンは徐々に出荷台数を増やしてきた。大型家電では唯一の成長市場といえる。

 背景にあるのは、世帯ごとの保有台数の拡大と、北海道や東北など寒冷地での普及拡大--の2点だ。特にコロナ禍で在宅勤務を余儀なくされ、執務スペースを確保するために空き部屋を利用したことなどで、エアコン未設置だった部屋への導入が加速した。同時に、在宅時間が増えたことでリビングなど家族が集まるスペースでも快適性に対するニーズが高まり、需要を押し上げた。

 需要拡大の余地を残すエアコンは、家電量販店をはじめ小売り側にとって今年度も重要な商材だ。

 年間を通して最大の商戦期となる夏に向け、メーカー側だけでなく、小売り側も早期購入を促す売り場づくりやキャンペーンなどを展開。それらの影響もあり、日本冷凍空調工業会(JRAIA)の統計では、4~5月の出荷台数は176万6000台(前年同期比14.3%増)と、前年同期比2桁増で推移している。

 エアコンは、白物家電の中でもIoT化が進んでいる。当初はフラッグシップ機のみという対応状況だったが、対応機種の拡大が続き、メーカーによっては標準機レベルにまでWi-Fiモジュールを内蔵するまでになった。

 暑さの厳しい日の帰宅前にスマートフォンから冷房を入れておくことで、帰宅直後から涼しい快適な環境で過ごせる、といった分かりやすいIoT化の利点があるからだ。

 エアコンに備える赤外線センサーを使った見守りなど、IoTを生かした機能も広がりつつある。

 今後はほかの家電やサービスとの連携も重要。既に空気清浄機との連携などは始まったが、他機器との連携は一部にとどまる。対象機種が限られていたり、メリットが伝わっていなかったりと、積極的に利用されているとはいいがたい。さらなる改良はこれからも必要になる。

 併せて、衛生・清潔意識に応えるため、熱交換器といった室内機の清潔性を保つ技術開発も重要だ。大量の結露水で一気に汚れを落とすなど、各社は熱交換器の清潔性を軸にした機能を提案。空気清浄機能を搭載する機種もあり、冷暖房以外に空気清浄機としての利用も訴求するなど、エアコンの「立地」を生かした提案も活発になっている。

 今年度の需要は、過去最高を記録した昨年度に比べて落ち着くだろうが、エアコン市場の底上げは図られている。高級機を求める傾向も以前より強まっており、堅調な買い替え需要を背景に年間を通して安定した市場になるはずだ。