2021.07.16 【電子部品技術総合特集】研究開発の取り組みTDK・佐藤茂樹取締役常務執行役員技術・知財本部長

佐藤 常務

DXとEX軸に7分野で技術革新推進

 TDKは、中長期戦略に沿ったR&Dを強化している。佐藤茂樹取締役常務執行役員 技術・知財本部長はR&Dの基本方針について「2CX(カスタマーエクスペリエンス・コンシューマーエクスペリエンス)実現に向け、『DX(デジタルトランスフォーメーション)』と『EX(エネルギートランスフォーメーション)』を軸に、持続可能な社会の実現にR&Dの面から貢献していく」と説明する。

 同社は新中期経営計画(3カ年)で戦略市場での七つのキー技術トレンドを想定した。「DXとEXを軸にこれら7分野で技術革新を推し進める」(佐藤常務)。具体的にはDXは「5Gネットワークを支える高周波対応技術」「知能化を支えるプレプロセッシング・新センサ」など。EXは「車一台分とグリッドを含めたエネルギーの最適化」「分散化・デジタル化・脱炭素」、両分野にまたがる技術トレンドに「処理能力向上と低消費電力化のトレードオン」を掲げる。「今後10年の変化を考えると、DXではポスト5Gや6G、さらにセンサーや情報処理技術が融合され、情報通信分野で革命が起きると考える。UIはスマートフォンからウエアラブル端末、VR/ARなどに多様化し、自動運転やロボットの制御技術も高度化する。これらは全てネットワーク化され、われわれの情報通信技術、ストレージ、AIなどのプロセッシング技術の重要性が高まる。EXでは再生可能エネルギーやパワーグリッド、分散型電源拡大でエナジー変換デバイスの発展が見込まれる。そうした将来の技術革新に向け、事業部門と一体となり開発リソースを投入する。加えて、材料、プロセス、解析、シミュレーションなどの要素技術を深め将来に備える」(佐藤常務)。

 同社は、日本、米国、欧州、中国の4極の研究開発体制を整備。

 新技術の動向を早期に察知し、新たな市場へのアクセスを強化するため、2020年に米サンノゼにコーポレートベンチャーキャピタルのTDKベンチャーズを設立。同社はTDKグループの成長戦略に基づき各方面への出資を実施している。技術・知財本部では大学や研究機関との連携を全世界で推し進めている。

 全固体電池は第1世代品を量産化済み。高容量の第2世代品開発にも着手した。5G/ポスト5G/6G関連は光通信も視野に開発を進める。「今後も規格動向を見極めながら次世代高周波ニーズに対応する材料、プロセス、評価技術開発に取り組む」(佐藤常務)。