2021.09.17 【抵抗器特集】メーカー各社、中長期での成長目指す

 抵抗器市場の回復が続いている。抵抗器のグローバル需要は2020年秋ごろから反転し、21年に入ってからは需要拡大にさらに弾みがついている。抵抗器メーカー各社は、自動車、第5世代移動通信規格5G、産業機器、エネルギーマネジメント関連などの分野に照準を合わせた技術開発や営業・マーケティング活動を強化することで、中長期での成長を目指す。(6~7面に特集)

市場動向 グローバル需要の回復続く

電流検出用低抵抗器

 抵抗器のグローバル需要は、17年から18年にかけて好調に拡大が続いたが、18年秋以降、米中貿易摩擦激化に起因する中国経済減速や世界的な自動車市場低迷が響き、18年末から19年にかけて低調な状態が続いた。電子情報技術産業協会(JEITA)の統計によると、19年の抵抗器グローバル出荷額は前年比12%減の1434億円にとどまった。

 さらに20年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大に伴う企業活動停滞や消費低迷が響き、年前半は厳しい状況が続いた。しかしながら、抵抗器需要はほかの電子部品と同様に20年夏までに底を打ち、秋以降は月を追って需要が回復。JEITAグローバル出荷の月次データでは、抵抗器のグローバル出荷額は20年9月度にほぼ前年同月並みに回復し、10月度にプラスに転じると、12月以降は前年同月比で2桁の増加が継続している。

 この結果、20年度トータル(20年4月~21年3月期)のグローバル出荷額は前期比1%増の1449億円となり、2期ぶりに前期比プラスで着地した。

 今期4月以降も抵抗器への旺盛な需要は継続しており、抵抗器メーカー各社は国内外工場でフル操業で対応している。

 抵抗器需要回復の背景は、20年夏以降の世界的な自動車生産の回復、5G関連での端末・基地局需要の増加、半導体製造装置需要の拡大、昨年末以降の産業機器・FA関連需要の回復などが挙げられる。さらに、テレワーク需要や巣ごもり関連でのパソコンやゲーム機などのコンシューマー関連機器の需要増も抵抗器を押し上げている。

 抵抗器のグローバル需要は、今後も中長期での増大が見込まれている。特に技術革新が加速する自動車は、今後も付加価値の高い抵抗器の需要をけん引する分野として期待されている。車載用抵抗器市場は、車の高機能化・電動化の進展により、今後も自動車生産台数の伸びを上回る成長が見込まれる。

 本格普及が進む5G関連も、端末用・基地局用を含め、抵抗器市場を活性化させていく見通し。デジタルシフトの加速によるICT関連や半導体関連での需要増も期待される。昨年は低迷したFA機器・工作機械などの産業機器向けの需要も、自動化ニーズの高まりなどにより堅調な推移が見込まれる。

 メーカー各社は、今後もADAS/自動運転や電動化をキーワードとした進化が進む自動車や、高機能携帯端末、産業機器、IoT関連などの成長市場に照準を合わせ、特徴ある新製品開発や営業・マーケティング活動を強化することで、持続的な成長を目指す。

製品動向 小型化進む、大電流対応なども

耐アーク性チップヒューズ

 民生機器市場向けでは、スマートフォンやウエアラブル端末などの携帯端末、各種小型モジュール、IoT関連機器向けに、チップ抵抗器の小型・薄型化追求が進んでいる。特に5G化で高機能化が一段と進むスマホは、端末内部の高密度実装化が一層強まり、チップ抵抗器への小型化要求も厳しさを増している。今後は0603サイズ、0402サイズなどの小型チップの需要が伸びていく見通し。同時に、チップ抵抗器の搭載点数を削減するため、2連チップなどの多連チップの搭載も進む。

 スマホの高周波回路では、高周波帯域での高精度な抵抗器が要求される。このため、抵抗値精度や抵抗温度係数などに優れた薄膜チップ抵抗器が用いられる。薄膜チップも小型化が要求され、0402サイズなどの小型化が進展している。

 電源回路では電流検出用途で低抵抗チップが用いられ、小型、ハイパワー、低抵抗が特徴の金属板チップ抵抗器などの需要が伸びている。

 次世代ニーズに対応する小型チップ抵抗器の開発では、0201サイズの超小型品の提案も始まっている。

 車載用抵抗器は、車の電子化・電動化進展に伴う新機能の搭載により、年々用途が拡大している。

 特に最近は、xEⅤ化進展に伴い、モーター駆動関連のDC-DCコンバーター/インバーター、バッテリー、チャージャー関連でパワー抵抗器の需要が拡大している。ADAS/自動運転技術の高度化も、ECUの搭載点数を増やし、抵抗器の需要を押し上げている。

 ミリ波レーダー、車載カメラ、LiDARなどのADAS関連では、それぞれの制御回路を小型モジュール化する動きが見られ、チップ抵抗器は0603サイズ、0402サイズといった極小チップの採用が始まっている。電源周辺の回路向けでは、硫化発生による抵抗値断線を防ぐために耐硫化チップ抵抗器が開発され、特殊な材料を使用することで、一般的な汎用品に比べ数十倍の耐硫化特性を有する製品などが実用化されている。

 半導体製造装置や工作機械、産業用ロボットなどの産業機器向けの抵抗器では、大電流、高電圧対応の抵抗器が多用される。

 計測器や検査・分析装置などの高精度が要求される産業分野では、薄膜抵抗器や金属箔(はく)抵抗器などが多用される。金属箔抵抗器は、平面に圧延されたニクロム系金属箔を平滑なセラミック基板に接着した抵抗体とした抵抗器。0.14ppm/度などの最小抵抗温度係数(TCR)、プラスマイナス0.005%という最小抵抗値許容差、5ppm/年という非常に優れた長期安定性を特長とする。