2021.11.16 脱炭素シンポ、相次ぐCOP26で機運高まり 水素や太陽光発電巡り講演、討議
水素をテーマに活発に議論した
世界が注目する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が英国で開催された今月上旬、国内でも脱炭素を巡るシンポジウムが相次いだ。水素や太陽光などエネルギーの転換期を迎えて機運が高まりつつある中、国内のかじ取りなどについて関係者らが活発に議論を交わした。
「第26回新時代のエネルギーを考えるシンポジウム」が5日、東京都内で開かれた。石油元売りのENEOS(エネオス)などがつくる実行委員会が主催。テーマは「脱炭素社会の未来像~カギを握る〝水素エネルギー〟」だ。
パネルディスカッションでは、保坂伸資源エネルギー庁長官が、世界をけん引する欧州の脱炭素化の動向について、「欧州と決定的に違うことが一つある。欧州は二酸化炭素(CO₂)を出さないことを目標にしている。だが、われわれはCO₂を出すかもしれないが、カーボンニュートラルのために、場合によってCO₂をマイナスにする技術も含めて全体を考えている」と問題提起した。
佐々木一成九州大学水素エネルギー国際研究センター長は、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解してつくるグリーン水素のポイントを2点挙げた。「中東など海外で再エネの価格が安くなる地域が出てくる。安い再エネを使って大量にできた水素を海外から供給できる」とし、さらに「国内では地方で実際に再エネ余りが起こりつつある。九州などでは出力抑制がされる。地方の再エネをうまく使った水素をモビリティーなどに利用すれば価値が出てくる」と指摘した。
太陽光発電シンポ
オンラインで10、11の両日に実施されたのが、太陽光発電協会が主催する「太陽光発電シンポジウム」。38回目となる今回は、太陽光発電の主力電源化に向け、地域や系統制約といったキーワードをもとに学識経験者らが講演した。
中でも、太陽光発電の拠点の一つと位置付けられるのが住宅だ。国は2030年までに新築一戸建て住宅の6割に太陽光発電設備を設置する目標を掲げている。10日に京都大学の諸富徹教授が「住宅を起点とする分散型エネルギーシステムの構築へ」をテーマに講演した。
諸富教授は、住宅の意義を「今までは単なる(電力の)消費地だった住宅自体が再エネの発電主体となる。蓄電池が調整メカニズムとして加わることで、電力需給調整の主体にもなれる」と説明した。
また、「将来的に、電動自動車の動く蓄電池としての機能が各戸に付け加わる。物的だけでなく、ソフトウエアやサービスとしてのイノベーションの可能性が出てくる」などと指摘。住宅太陽光が、メガソーラーや風力発電などと並ぶ、拠点の一つになるとの見通しを示した。
太陽光発電を急速に伸ばす上でカギを握るのが「プロシューマー」と呼ばれる存在だ。生産者を意味する「プロデューサー」と消費者「コンシューマー」の造語で、工場や住宅の屋根などにパネルを設置し、電力を自家消費しつつ余った電力などを系統を通じて売り買いする企業や個人を指す。こうした仕組みが「本格的に推進されなければ実現できない」(諸富教授)とした。
11日には企業の太陽光発電導入法などを議論するパネルディスカッションが行われた。再エネ系新電力のUPDATERの三宅成也専務は「エネルギー業界は大きな転換期を迎え、資源価格が高騰するなど先行きが見えない中、需要家自らが太陽光発電所を確保していくことは、ある意味、リスクヘッジになる。そうしたことが見えている企業が今、動きだしている」と語った。