2022.02.15 インドネシアの地熱、国内エネルギー大手など参画 ポテンシャルの高さに期待

インドネシアのランタウ・デダップ地熱発電所

 国内のエネルギー大手などがインドネシアでの地熱事業に関心を注ぐ。多くの火山島から成り、資源量は日本を上回る世界2位。そのポテンシャルへの期待は、脱炭素の潮流を受けて高まるばかりだ。再生可能エネルギー、地熱発電所の稼働や参画が相次いだ。

 東北電力は1月、出資参画したインドネシア・スマトラ島南部にある「ランタウ・デダップ地熱発電所」が営業運転を始めたと発表した。同社として海外で初めて参画した地熱発電事業となる。

 2008年7月に設立された現地の事業会社「スプリーム・エナジー・ランタウ・デダップ」(ジャカルタ)が18年4月から建設を進めてきた。事業会社に出資するのは、フランスの大手電力・ガス事業会社エンジーや大手商社の丸紅、現地の民間地熱発電事業者スプリーム・エナジーだ。東北電力は丸紅からの打診を受ける形で18年に加わったという。

 同発電所は昨年末に運転を開始。出力は約98MWに及び、インドネシア国営電力会社に30年間売電する契約を結んでいる。

 東北電力グループは、東北地方で5カ所の地熱発電所(合計出力212MW)を展開しており、国内では九州電力に次ぐ規模だ。東北電力は「40年以上にわたって国内で培ってきた技術を海外でも生かしていく」と期待を込める。

 同じくスマトラ島で稼働する「ムアララボ地熱発電所」への参入を昨年末に公表したのは石油開発国内最大手のINPEX。同島西部に立地し、19年12月から商業運転を始めている。

 出力は約85MW。島内の約42万世帯分の年間電力使用量に相当するといい、同様に30年間、国営電力会社に売電する。

 「世界各地の優良な地熱案件を探している」(INPEX)中で、各プロジェクトを比較、検討した結果、投資判断に至ったのがムアララボだった。インドネシアでは天然ガスの開発プロジェクトなども進めており、「長年の地域的な知見もある」(同社)ことなども背景にあった。

 同発電所にもエンジーやスプリーム・エナジーが加わっているほか、日本勢としては住友商事が参画。INPEXは関連会社の株式取得を通じて発電事業の約10%の権益を得たという。

 INPEXが手掛ける海外での地熱事業は今回で2件目。いずれもスマトラ島での開発となった。15年には島北部のサルーラ地熱発電所への参画を表明。出力が約330MWに達し、単一の地熱発電所としては世界最大規模の発電所だ。「インドネシアには多くの地熱事業があり、ポテンシャルは高い」(同社)。

 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)によると、インドネシアの地熱資源量は2779万kWで、米国に次ぎ3位の日本を約400万kW上回る。近年の伸びが顕著な開発国の一つで、発電設備容量でも15年から20年にかけて949MW拡大させ、隣国フィリピンを抜いて2位になった。

 インドネシアは資源量の面に加え、「一般的に国内の法制度がしっかりしており、投資しやすく参入しやすい」(JOGMEC)。

 JOGMECでは今年度から国の事業として、日本と類似した海外の火山帯での資源調査に乗りだし、国内での地熱資源開発に役立てていくことにしている。