2022.05.27 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<88>5G×ディープラーニング=DXになる⑨

 1990年代後半から2000年代に生まれた世代(現在の10代前半~20代中盤世代)を「Z世代」と呼ぶらしい。少子高齢化が進む中で次代を担う貴重な人財だ。

 この世代の中心層は感受性の強い思春期に東日本大震災に遭遇し、人生の岐路ともいえる受験や就職活動をコロナ禍で体験したことから、その上の世代と比べて社会問題への関心が強い傾向があるという。

DX推進人財

 なるほど、大学などで社会の課題解決ニーズを起点にデジタルトランスフォーメーション(DX)の講義をしている時、学生らの熱い視線を感じるわけだ。Z世代はスマートフォンやSNSの映像メディアで育った世代でもあるので、デジタルネーティブといえるだろう。

ローカル5Gの自衛網構築、小規模工場、大規模工場

 5Gや深層学習(ディープラーニング)といった難しいデジタル技術の話にも理系文系を問わず、ふに落ちたような表情を見せてくれる。このような光景を目の当たりにすると、Z世代を中心にDX推進人財が広がっていくような気がする。

 さて、ヒトやモノの動きのある現場に高精細4Kカメラなどを導入し、映像を分析しながら現場改革を進めていく「映像データ駆動型ビジネス変革」を進める際には、超高速な無線の自営網があるとよい。ディープラーニングには大量の映像データの送信が必要だからだ。

 例えば、大企業の大規模工場にローカル5Gの基地局アンテナを立ててローカル5Gの自営網を構築する方法と、中小企業の小規模工場にWi-Fi6ルーターを置きローカル5Gと接続する「ローカル5G&Wi-Fi6ルーター」型の自営網を構築する方法がある。

 後者の場合、固定されたWi-Fi6ルーターのアンテナから、例えばCATV(ケーブルテレビ)事業者など地域の通信事業者が電柱に設置したローカル5G基地局アンテナへ接続し、隣の建物をはじめ、土地や公道、河川越しに電波を飛ばす。いわゆる、FWA(固定無線アクセス)と呼ばれる形態だ。

 この方法ならローカル5Gの構築や免許取得といった面倒な作業は不要。ローカル5GのSIMを購入するだけで、映像データをクラウドへ転送し、蓄積されたビッグデータやディープラーニングなどの情報資源を利用できるようになる。

漏えいリスク回避

 しかし、情報漏えいリスクを回避したいため、情報資源を自社に閉じた環境で利用したい場合もある。

 本シリーズ⑦(第86回)において、エネルギー資源の「分散→集中→分散」の遷移は情報資源でも同じだと述べた。仮にデータ駆動型社会が進展し、情報資源の価値が高まればセキュリティーリスクも高まってくるため、よりセキュリティーを重視する環境ではパブリッククラウド(集中=共用:高リスク)からプライベートクラウド(分散=専用:低リスク)への移行が進む、と筆者は見ている。

 プライベートクラウドには、情報資源を自社の施設内に置くオンプレミス型と、外部の施設内に自社(仮想)の情報資源を置くホスティング型があり、用途やセキュリティーレベルに応じて選択することになるだろう。いずれの場合でもエッジ側の高速無線通信環境は不可欠だ。

 新たな社会価値を創造するDXの推進には情報資源は欠かせない上、それを活用するための5Gインフラと人財は重宝されるだろう。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉