2023.03.15 電機大手の春闘、ベア満額回答相次ぐ 歴史的な高水準に
記者説明会に臨む電機連合の神保中央執行委員長=15日、東京都中央区
2023年の春季労使交渉(春闘)の集中回答日となった15日、大手電機メーカー各社が基本給を底上げするベースアップ(ベア)に相当する賃金改善分について、いずれも労働組合が要求した月額7000円に満額で回答した。急激な物価高騰の影響を考慮するとともに、持続的な成長に向けて「人への投資」を強化する姿勢を打ち出した。今後は、大手各社の勢いが中小企業に波及するかが焦点となりそうだ。
電機各社の労組で構成する電機連合は、今春闘でベア相当の賃金改善について、25年ぶりの高水準となる月額7000円以上を統一要求。妥結を容認する下限額を月額5000円とする方針も決め、それに沿って「中闘組合」に属する主要12社の労組が大詰めの交渉に臨み、経営側から満額回答を引き出した。満額回答で12社の労組がそろうのは、現在の要求方式となった1998年以来初めてという。
中でも電機大手では、労組が要求するベア相当の月額7000円に対して、日立製作所や富士通、三菱電機などが満額回答。パナソニックホールディングスも満額回答で、昨年の回答(1500円)の5倍近い水準で妥結した。東芝やNECも、福利厚生のポイントを含めて満額回答となった。
日立は同日に東京都千代田区の本社で開催した記者説明会で、Deputy CHROを務める田中憲一・執行役常務は回答理由について、「特に成長と分配の好循環を意識した」と日本経済に貢献する姿勢を強調。さらに足元の物価上昇や先行きが不透明な事業環境も踏まえ、「総合的に判断した」と説明した。中期経営計画の達成に向けて「高い目標にチャレンジする従業員のモチベーションを高めることも重要と考えた」とも述べた。
歴史的な賃上げが相次ぐ背景には、国内外で激化する人材の争奪戦がある。「会社を成長させイノベーションを生むための最大の源泉は人材だ」という田中氏の発言からは、人材獲得で競争優位に立ちたいという意欲もにじみ出ていた。
電機連合の神保政史中央執行委員長は同日に東京都内で開いた会見で「電機産業の労使が人への投資の重要性、必要性を確認した上で論議を深めて導いた回答と受け止めている」と高く評価。中小を含む業界全体に波及する効果にも期待を寄せた。