2023.08.11 【育成のとびら】〈8〉上司と部下の職場のコミュニケーション、約9割がズレを実感! 再説明、やり直しなど、組織全体の生産性低下に影響
「部下が指示した通りに仕事をしてくれない」「上司の指示が分かりにくく、あとでこっそり同僚に意図を聞いた」。あなたの職場でこんな経験はないだろうか-。
上司、部下の双方の立場で悩みの多い、ビジネスコミュニケーションにおける「認識や理解のズレ」。その実態を調べるため、当社ラーニングエージェンシーとラーニングイノベーション総合研究所は今年の2~3月にかけて、研修受講者614人を対象にアンケート調査を実施した。
その結果、「職場で同じ話を聞いたりする際、コミュニケーションにおける『認識や理解のズレ』は発生しているか」との質問に対し、88.1%が「発生している」と答え、さらに82.7%がそうしたミスコミュニケーションで困ったことが「よくある・たまにある」と回答した。
重要なスキル
コミュニケーション能力は、「人懐っこい」「明るい」「内向的」といった生まれ持ったキャラクターや性格などと混同されがちだが、学習やトレーニングによって磨くことができるスキルだ。
そして、コミュニケーション能力の中でも特に「相手がどういうニーズ、課題を持っているのか」「何をしてほしいのか」ということを適切に読み解き、提案、回答する能力は業務の成果を上げる上で欠かせない。それは、ビジネスにおいて最も重要な〝バイタルスキル(社会人にとって必須の能力)〟といえる。
また、組織やチームの進みたい方向を提示し、仲間とともに向かっていくという場面においても、情報や認識の正しい共有は必須だ。
実際に当社のアンケートで、困ったことの具体的な事例について複数回答してもらったところ、「再度同じ説明をしてもらうことになった/再度同じ説明を求められた」(54.1%)、「思わぬところでタスクの抜け漏れが生じた」(43.6%)、「イメージとは異なる成果物を作ってしまった/イメージとは異なる成果物が出てきた」(34.5%)などが多かった。
さらに割合が少ないながらも「納期などの進捗(しんちょく)に影響が出た」(23.9%)、「顧客のクレームにつながった」(9.0%)などの回答もあり、ミスコミュニケーションが組織の生産性、効率化を阻害していることが分かった(図)。
現状把握から開始
コミュニケーション能力は、取り組んですぐに結果が出るものではないが、正しく学べば必ず精度が上がる「技術」だ。組織の競争力を高めるためにも、まずは社内のコミュニケーションのズレがどれほど発生しているのか、現状を把握してみることから始めてみてはいかがだろうか。
次回は、ミスコミュニケーションを起こさないために、情報を伝える側、受け取る側それぞれが、どのような工夫を行っているのか、アンケート結果から探っていく。(つづく)
〈執筆構成=ラーニングエージェンシー〉
【次回は8月第4週に掲載予定】