2023.11.06 【ケーブルテレビ特集】米映像配信業界 主役交代に「待った」
Xumoの画面イメージ
ケーブルテレビ3社が連合
〝ストップ・コードカッティング〟
今年8月、米調査会社ニールセンのテレビ視聴調査が発表され、米ケーブルテレビ(CATV)業界はざわついた。同社が2021年6月、配信形態別のテレビ視聴時間シェアの月次データ公表開始以来、7月の地上波とCATV合計の視聴時間シェアが初めて50%を切ったためだ。
ニールセンによると7月の視聴時間シェアはネット動画配信38・7%と前年同月比7.2%増の38.7%。逆に地上波は20.0%、CATVは29.6%、合計しても50%に届かなかった。
ニールセンの調査発表が示すように、ケーブル契約の解約者を意味する「コードカッター」現象が今後も常態化するのかと不安視する向きもあったが、その後持ち直して8月は地上波・CATV合計で50.6%、9月は52.8%へと巻き返している。
しかし、CATV業界が契約者数で下降傾向をたどっていることは疑いがない。最大手のコムキャストは今年7~9月期に前年同期より265万人、業界2位のチャーター・コミュニケーションズも91万人と、この1年間に多くの加入者を失った。
こうしたネット視聴優位の状況下だが、米国CATV業界は策を放置しているわけではない。生き残りを賭け、業界上位が連携し、なんとか加入者の維持・増加をという動きが出ている。
昨年4月にコムキャストとチャーターが合弁で配信サービス事業会社「Xumo」(ズーモ)を立ち上げ、今月ようやく具体的に始動。ズーモが〝ストリーミングボックス〟と呼ばれるケーブルと配信アプリ用の独自ハイブリッド端末をコムキャストとチャーターそれぞれの加入者宅へ供給開始する体制を整えた。
コムキャストは〝Xfinity〟、チャーターは〝Spectrum〟のブランドでライバルの動画配信会社の映像やインターネットサービスを各加入者宅で受信できる仕組みをつくった。
この結果、従来のCATV用セットトップ端末(STB)より簡単操作のズーモの端末は、コムキャスト、チャーター双方の映像を受信できるほか、アップルTV+、ディズニー+、Hulu、Max、ネットフリックス、ピーコック、アマゾン・プライムビデオ、Tubiなどの映像受信にも対応。定額サービスや広告付きサービス(FAST)を含め約300チャンネルをズーモのボックスで管理できる。
ズーモ自体もパイオニア製4Kテレビモニター「XumoTV」の4モデルをクリスマス商戦に合わせて今月から販売に乗り出す。国内最大の量販店ベストバイ(BB)が店舗と通販で同テレビを独占販売する。
ズーモの販売担当ステファン・カッシ副社長は「(端末の)操作性を重視すれば視聴者は当然ケーブルに戻ってくる」と語る。
加入者数で第5位のメディアコム・コミュニケーションズもズーモの端末を自社の257万人(21年末時点)の加入者向けに供給すると発表。加入者は数カ月後に4Kのストリーミングサービスを受けることになる。
歯止めになるか
米国の映像配信市場で、主役交代の兆しが顕著になってきた。しかし、コムキャストを軸に米国では「ケーブル3社連合」による〝ストップ・コードカッティング〟の動きがようやく出てきたことは確かだ。YouTube、ネットフリックス、アマゾンなど新興のネット映像配信企業に対し、3社連合がどれだけの加入者数衰退の歯止めになるのか、注目したい。