2024.01.18 【情報通信総合特集】主要プロバイダー各社に聞く24年の取り組み 電波新聞社アンケート
DXの取り組み、海外展開、働き方改革
電波新聞社はこのほど、主要ソリューションプロバイダー各社に2024年の市場、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み、海外展開、働き方改革についてアンケート調査を実施し先の見通しを探った。アンケートは毎年新年と夏の2回行っているもので、各社の景況感の見方と施策、成果を定点観測している。今回は23年12月25日から24年1月15日まで実施し、32社から有効回答を得た。
業種別受注見通し 製造業が好調、流通も増える
24年のICT(情報通信技術)関連市場は引き続き堅調に推移しそうだ。デジタル技術を活用した投資は23年から引き続き堅調に推移すると予想され、システム環境のクラウド化はさらに進んでいくとみられる。
アンケート結果によると、足元の受注状況は悪くなく12月までは大幅増加も含めて約6割が「増加」を選択した。1月以降も受注は堅調に推移するとみられるが、6月ごろまでは全体ではやや落ち着きを見せそうだ。
業種別の受注見通しは、前回調査から続いて製造業が好調で、6割以上が「増加」を選択した。流通は前回よりも「増加」の回答が増え約5割が選択。金融は一部企業で案件の動きがあるようで「大幅増」を選択するところもあった。公共は6割以上が「前年並み」だ。
一方、通信業は「減少」の選択が他業種よりも高く、インフラ投資の落ち込みなども影響しているとみられる。
市場の見通しについては「緩やかに成長し続ける」との回答が87%で、前回の73%よりも大きく増えた。一方、「24年3月頃まで成長」という回答もあり、先行きを懸念するところもあった。
昨年、新型コロナウイルスは「5類感染症」に移行し、アフターコロナの生活が本格的に始まった。マイナスの影響が出ている企業は前回の6%からゼロになり、前々回の25%から段階的になくなった。影響が出ていないところは前回の44%(前々回19%)から48%まで増え、プラスに働いている企業は37%から52%となった。
為替の影響については、出ていない企業が前回より減り45%となった。良い方向に出ている企業が28%と前回よりも増え、悪い方向で出ている企業も前回の20%から27%に増えた。
24年に伸びる分野は前回調査から上位に変動はなく、「クラウド」「セキュリティー」「AI」「IoT」となった。全体の傾向は前回から変わらないが、カーボンニュートラルやフィンテック、BPOなどが前回よりも増えた。チャットボットやSDxなどは落ち着いてきそうだ。
24年の重点施策は前回調査から変動し、「AI関連の取り組み」が首位となった。「サービス事業へのシフト」「セキュリティーの強化」「クラウド」も引き続き回答数が多かったほか、「マネジメントサービス」「デジタルマーケティング」の取り組みが前回から増えた。
大半の企業がDXの取り組み推進
デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みについては、提供している企業は97%(前回97%、前々回92%)となり、引き続き大半の企業が取り組んでいる。DX関連のサービスでは、「IoT」が大きく伸び首位に。「クラウド」「ビッグデータ」と続いた。「AIを組み込んだシステムやサービス」の選択数は減った。
DX関連の売り上げ状況については「伸びている」と回答した企業が大半を占めているが、前回同様に一部で「伸びていない」との回答も見られた。依然として「AIを組み込んだサービス」で売り上げが伸びていない比率が高かった。
現在取り組んでいないが今後取り組みたいサービスでは「メタバース」が最も多く、次いで「AIを組み込んだサービス」だった。
働き方改革の課題、「モチベーション向上」浮上
働き方改革については、引き続き全社が取り組みを進めていた。働き方改革の取り組み内容については前回と同様の結果となり、「テレワーク」「人事制度の見直し」「AI、RPAの導入による作業の削減」の順だった。この傾向はこの1~2年で変わっていない。
働き方改革の効果については「出ている」との回答が97%で前回の95%から増えた。具体的な効果については「社員満足度が上がった」という回答が前回から続き1位だった。次いで「残業が減った」となり、「生産性が上がった」という回答は3位だった。
働き方改革の課題については前回同様「コミュニケーションの改善」が最多。前回2位だった「業務管理の方法」が3位になり、「社員のモチベーション向上」が2位に浮上した。前回より「公正な業務評価」を選択した企業が増え、評価面で課題視するところが目立った。
半面で在宅勤務については大半の企業が「全社的に継続する」という回答だった。全体的に情報サービス企業の在宅勤務継続率は高めだが、見直しをする動きも出てきている。今回は「部門によって継続する」という回答が増えた。
海外売上高、「減っている」が増加
グローバルに関しては「海外展開している」と回答した企業が75%(前回76%、前々回70%)となり、撤退したところは6%(前回3%)あった。海外事業の多くは営業拠点とオフショアで、両方を展開しているところも多い。
海外売上高比率は、前回と同様に「0~3%」の企業が最も多く45%(前回54%)だった。2位は「3~5%未満」(18%)で、3位は「20~30%未満」「30%以上」(9%)だった。
海外売上高については「増えている」との回答が35%(前回、36%、前々回40%)と減少した。
一方、「減っている」との回答は13%(前回11%、前々回12%)と比率は増えた。増えている企業は需要の拡大や為替影響などがあった。
海外事業の今後については、52%(前回59%、前々回46%)が「増やす」と回答。海外展開をしていない企業については、今後の予定は「ない」が43%で、「未定」は57%だった。
今後期待できる地域については「北米」が前回同様に1位で、前回同率1位だった「インド」は「ベトナム」と同率2位に。4位は「タイ」で、5位は「西欧」だった。
アンケート回答企業一覧
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