2020.04.20 リソルグループ、再エネ電力を自営線+自己託送で全量消費 体験型リゾートで地産地消
丘陵地にあるリソルの森
千葉県房総半島の中央部にある広大な体験型複合リゾートで、太陽光発電を地産地消する新たな取り組みが始まった。
敷地内で発電した電力を、自営線や既設の送電線を組み合わせて送電し、複数の施設で使い切る。こうした仕組みは国内では初めてという。
体験型複合リゾートは「Sport&Do Resort リソルの森」(千葉県長柄町)。ホテルやゴルフ場運営などを手掛けるリソルグループ(東京都新宿区)が、4月にリニューアルオープンさせた。
丘陵地約330万平方メートルに、ゴルフ場2コースや健康増進施設、多目的グラウンド、温泉施設、ホテル、住居などが点在。多くの世代の利用客を集める一大リゾートだ。
同社は19年度に、福島県石川町でゴルフ場跡の一部を活用して、最大出力約37MWのメガソーラーを稼働させて、再生可能エネルギー事業を本格化、収益化している。
今回、同社は「リソルの森」を事業費約5億円をかけて改修。敷地内に太陽光パネル約3300枚(合計出力1200kW)などを設置した。
自営の配電線約1.2キロメートルを地中に埋設して、トレーニング機器などが並ぶ主要施設「メディカルトレーニングセンター」までつなぎ、さらに、約1.5キロメートル離れたゴルフ場のクラブハウスに、従来からある電力会社の送電線を介して供給する。
できた電力で、両施設の消費電力の30%超を賄う予定。メディカルトレーニングセンターで最大限に消費し、余剰分をゴルフ場に送電して全量消費するシステムだ。
同社によると、こうしたシステムで、年間の二酸化炭素排出量を343キロリットル抑制できる効果があり、省エネ率は33.5%に及ぶ。
送電線も活用し「面的」供給
今回のシステムの新しい点は、再エネでできた電力を全量消費するために、複数の施設に「面的」に供給する仕組みとして、自営線と既設の送電線の両方を組み込んだことだ。
メディカルトレーニングセンターとクラブハウスの距離は約1.5キロメートルあり、自営線を設置するにも費用がかかりすぎる。「コストを大幅に低減できる」(同社)として、自己託送と呼ばれる既設の送電線を活用する方法が選ばれた。
ただ、太陽光は天候などにより出力の変動がある。そのため、電力会社の電力系統自体の安定性を維持するため、事前に需給量を予測して計画値を設定したうえで、実際の需給量を30分単位で一致させ続けることが求められる。
この条件に適応するために導入したエネルギーマネジメントシステムでは、充放電機能を持つ蓄電池や蓄熱機能があるヒートポンプ給湯機などを一体で制御。天候や気温、湿度、利用客数などから予測して運用しながら、機械学習させて精度を高めていく。
同社は「コストの合理化など、FIT(固定価格買い取り制度)に頼らない再エネの普及モデルになりうる。予測のノウハウも蓄積させたい」と話している。
リゾート内のホテルなどでは、電気自動車(EV)を活用して電力供給する構想もある。今後も、エネルギーの先進地として、注目を集めるエリアになりそうだ。