2025.01.14 ラピダスが国内IT2社と協業 AI半導体を受託製造、DCに展開
PFN、さくらインターネットとの協業の概要
国内で最先端半導体の量産を目指すラピダスはAI(人工知能)開発を手掛けるプリファードネットワークス(東京都千代田区、PFN)、クラウド大手さくらインターネットと協業の基本合意に至った。PFNが設計するAI半導体をラピダスが製造する方針。さくらインターネットのクラウド開発の知見を組み合わせる。グリーン社会に貢献する国産AIインフラの構築を目指す。
IT2社との協業
PFNが設計するAIプロセッサー「MN―Core」シリーズで新しく設計するモデルをラピダスが製造する。さくらインターネットはデータセンター(DC)やクラウドサービスを手掛けており、同社のDCのデータ処理のためにラピダスで製造した半導体を供給するなどといった連携が考えられる。
PFNは生成AI基盤モデルやスーパーコンピューターなどソフトウエア、ハードウエアの両面から垂直統合的にAI技術を開発しており、2016年からAIに使う半導体も設計している。今回の協業でラピダスは国内の顧客を獲得する形だ。
3社ともAIの計算力確保のために莫大な電力が必要になるという課題に対し、それぞれの仕方でグリーン技術に取り組んでいる。MN―Coreシリーズは省電力で高い演算能力を備え、さくらインターネットは外気を使ったサーバー冷却で消費電力を削減している。連携により、安定的に半導体を設計・製造・供給するインフラの整備を目指す。国内のさまざまな事業者が運営するDCにも展開する計画だ。
ラピダスのパートナーシップ戦略
ラピダスは国内で最先端のロジック半導体の受託製造を行うファウンドリー。2ナノメートルプロセス半導体の国内量産を目指し、政府も積極的に投資を進めている。
今年春から試作ラインを稼働、27年から量産開始を目指す。現在北海道千歳市に製造拠点「IIM―1」を建設中。TSMC(台湾積体電路製造)のような海外大手が先端チップの量産体制を既に築いているのに対し、短工期での多品種少量生産を担う考えだ。
それに向け設計ツール、製造装置などさまざまなセクションでの共同研究や顧客の獲得が必要になる。そこで、国内外各社と連携を進めており、今回の協業もその一環だ。
これまでの連携
ラピダスは米IBMの先端半導体製造に関する技術協力により、日本国内における最先端半導体の製造を目指している。現在、製造技術を学ぶためにIBMへ派遣した技術者は約150人に上る。複数のチップを1チップに収めるチップレットパッケージ技術でも昨年6月、共同開発に向けたパートナーシップを結んだ。
ベルギーの研究機関imecとも連携している。imecはオランダの製造装置メーカーASMLとEUV(極端紫外線)露光装置の共同研究を進めており、ラピダスとの連携も製造に関する技術支援だ。EUV露光装置は2ナノメートルプロセス以降の半導体製造に必要不可欠でラピダスにも昨年12月に搬入された。
カナダの新興テンストレントとの連携では、エッジAIアクセラレーターの開発・製造に取り組む。ファウンドリーとして受託製造を行うほか、ラピダスや東京大学が参画する研究機関LSTCの事業でテンストレントでの研究による人材育成事業も発表されている。
昨年12月には半導体設計・開発自動化ツールであるEDAを手掛ける米国の大手ベンダーとの協業も発表された。ラピダスはファウンドリー企業だが「製造のための設計」という考えのもと設計・開発も支援し設計と製造を同時に最適化するビジネスモデルを掲げており、EDAベンダーとの連携が必要になった。
協業するうちの1社であるシノプシスとは、プロセス感度やばらつきの新しいモデル化により設計のサイクルタイムを短縮するソリューションを共同開発する。同社のAIベースの設計ツール群を採用することで、製造プロセスやプロセス設計キットのアップデートに迅速に対応できる。
もう一方のケイデンス・デザイン・システムズは、ラピダスが省電力・高性能化のために採用する2ナノメートル GAA(ゲートオールアラウンド) 製造プロセスと裏面電極(BSPDN)技術に関する設計ソリューションとIPを提供する。GAAは3ナノメートル以降のプロセスノードを実現するために必要なトランジスタ構造で、BSPDNはチップの裏面から電力を供給する技術。半導体設計には再設計可能な数多くのIPがあり、それに対応したEDAツールが必要になるため、協業に至った。