2025.05.16 【小売り・流通の新潮流】「楽しみとしての購買を」 消費者目線でこだわり商品の応援文化醸成 マクアケの中山亮太郎社長に聞く㊦

インタビューに応じた中山社長インタビューに応じた中山社長

 マクアケ(東京都目黒区)の中山亮太郎社長は、消費者目線で応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」に磨きをかけ、事業者のこだわりが詰まった新商品・サービスの応援を楽しむ消費文化を広めてきた。インタビューの後編では、「プラスアルファの購買体験」を追求する中山社長の思いに迫った。

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 ―マクアケを消費者目線で見ると、新たな商品や体験を生む事業者(プロジェクト実行者)のこだわりに共感し、応援の気持ちを込めて購入する体験が味わえます。この仕組みに込めた思いは。

 中山社長 消費者に「マクアケもチェックしておこう」と思ってもらいたい。そのためには、楽しみと他にはない発見がある場としてプロデュースすることが大切。目的を持って購入できる場所としてのポジションも築けると考えている。

 事業者にとっては、BtoC(消費者向け)でも経営として成り立つようにしなければならない。小売り・流通の空白地帯にマクアケのポジションを確立することで、豊かな生活に貢献できると考えている。

事業への貢献意識

 ―マクアケで応援購入する消費者の傾向について教えてください。

 中山社長 能動的にサイトにアクセスする人が多い。(対話アプリの)LINEやメールマガジンでの登録をきっかけにサイトを訪問する人もいる。メディアの記事やプロジェクト実行者が出す広告をきっかけに来るケースもある。

 「自分の買い物が実行者の事業拡大に貢献している」といった感覚を持っている生活者が多い。年代では40~50代の男性が目立ち、「モノの良さ」を判断できる人や「自身のアイデンティティーをモノの購入によって高めたい」というこだわりを持つ人が多い傾向にある。そのため、一般的なEコマース(電子商取引)よりも単価は高い。

 ―リアル店舗への展開は。

 中山社長 リアルの場を生かした出展イベントも開催している。ヨドバシカメラマルチメディアAkiba(東京都千代田区)では、4月18日から20日まで、最新ガジェットを体験し購入できるイベントを行った。ガジェットは生活者を引き付ける存在で、多くの人でにぎわった。

 家電量販店でのイベントに加えて、生活の動線にあるSNS(交流サイト)でのアピールにも取り組みたい。マクアケのリアル店舗への出店という選択肢も、総合的な販売力を上げていくための手段の1つとなる。

体験価値の向上へ

 ―マクアケは今後、どのように進化させていきたいですか。

 中山社長 生活を豊かにするには「楽しみとしての購買」が必要と考えている。プラスアルファの購買体験を味わえるようにしていきたい。消費者が体験する価値を高めるため、リサーチサービス「Makuake インサイト」を改善するスピードを加速するとともに、一般市場に流通するグロースの部分でどのように販売力を高めていくかという課題にも取り組みたい。

 ―マクアケをどのような存在にしていきたいですか。

 中山社長 グロースを通じて誰かにとって必要なものを生み出し、(商品・サービスと消費者が)出会う機会を広げていきたい。培った売り場やデータなどのノウハウが、小売り・流通業界で独自性として生きてくる。

 大量流通と大量広告という前提がなければモノが売れない状況が、流通エコノミクスの大半を占めている。しかし今後は、「多様な楽しみを味わえる購買」を体験する機会が増えてくると見ている。

(おわり)