2025.07.25 【半導体/エレクトロニクス商社特集】半導体用材料の動向 次世代プロセス材料開発加速 DCや自動車関連などで

超厚膜・ハイアスペクト微細加工対応の感光性ポリアミド材料

次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板

 電子材料メーカー各社の半導体用材料の技術開発が活発化している。生成AI(人工知能)の広がりに伴い、半導体は一層の微細化や3次元化などの技術革新が一段と進展している。材料メーカー各社は、半導体のイノベーションを促進する次世代のプロセス材料開発を加速させている。

 世界全体の半導体材料市場における日系材料メーカーのシェアは約5割に達し、ワールドワイドで高い競争力を有している。特に先端分野のロジックやメモリーで市場される素材は、日本企業が極めて高い存在感を有している。

 半導体製造の前/後工程で必要とされる電子材料は、シリコンウエハーをはじめ、半導体フォトレジスト、ソルダーレジスト、封止材、パッケージ材料、半導体製造用高純度ガスなどさまざまな種類があるが、多くの製品分野で日本企業の世界シェアは5割を超え、分野によっては9割を超えるシェアを有する製品もある。

 電子材料各社は、ハイエンドスマートフォンや次世代自動車、サーバー/データセンター(DC)、AR/VR機器、次世代ディスプレー、再生可能エネルギー関連などの技術の進化が促進する半導体技術の高度化に向けた新材料開発を推進する。特に、AIが促進するサーバー/DCの高速・大容量化や、ADAS/自動運転技術の高度化、Beyond5G/6G通信などに対応する半導体の微細化や高性能化、3次積層化、パッケージングの技術変革などをサポートする技術開発に力を注いでいる。

 脱炭素/カーボンニュートラルに対応した次世代パワーデバイス用の材料開発も進展。さらに、必要な性能を維持しつつ、PFAS(有機フッ化合物)フリーを実現した新たなプロセス材料開発などにも力が注がれている。

パッケージング注目

 特に最近の半導体市場では、技術革新が進む中で、前工程のウエハープロセスのナノ超微細化だけでなく、後工程の半導体パッケージングプロセスへの注目度が高まっており、半導体パッケージの大型化に伴う課題の一つである反りを抑制した次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板や、先端パッケージング工程での基板への微細回路パターンの形成性能力の向上に寄与する新規感光性ドライフィルム、車載半導体の高度な耐久性要求に対応する高信頼性ドライフィルムタイプソルダーレジストなどが開発されている。

 半導体露光プロセス用材料では、半導体チップの微細化を支える次世代露光技術「EUV」向けの技術開発が活発。EUVリソグラフィーでは、波長13.5ナノメートルのEUVを光源とすることで、数ナノメートルの回路パターンをシリコンウエハーに形成可能。EUVリソグラフィーは、7ナノメートルプロセス世代以降のロジック半導体やメモリーに不可欠な技術として、一部の半導体メーカーで実用化が始まり、今後、大きな市場形成が見込まれている。

 このため、半導体フォトレジスト(感光材料)メーカーは、EUVレジストの技術開発や設備投資を活発化させている。EUVペリクル(フォトマスク防じんカバー)では、過酷な露光環境への対応や高透過率へのニーズに対応する次世代EUVペリクル開発が進展している。

 パワー半導体向けでは、車載・産機市場での省エネ・高効率化ニーズに対応する次世代パワー半導体素材として、SiC(炭化ケイ素)材料やGaN(窒化ガリウム)材料の開発、生産能力増強の動きが活発。さらに、第3のワイドバンドキャップ材料として、酸化ガリウム(Ga₂O₃)の技術開発も進められている。

 電子材料業界では、研究開発の迅速化や効率化のため、研究開発業務におけるAI活用の動きも加速している。各社は、AIに知見を持つ企業などと連携し、自社業務に最適化した独自のAIモデルなどを開発することで、開発期間の大幅な短縮や開発コスト削減、次世代ニーズに対応する革新的材料開発、新規用途開拓などを追求している。生成AIを活用して他社製品の技術分析を行い、将来の協業先企業の選定に活用するなどの取り組みを進める企業もある。

 さらに、異なる企業間の実験データ連携のための秘密計算技術の実証なども進められている。

 半導体市場材料市場の中長期の拡大に対応するため、材料各社の新工場建設や既存工場拡張などに向けた投資も活発化している。特に最近は、半導体デバイス投資が活発な九州・熊本地区や北海道地区などでの新生産ライン整備や倉庫建設などに乗り出す企業が目立っている。