2025.08.12 「走るスマホ」時代へ イーソル、「フルスタック」戦略を提唱

日本の課題も捉えつつ、SDV戦略を説明する権藤社長

フルスタックエンジニアリングの概念図フルスタックエンジニアリングの概念図

デモを交えた展示に多くの来場者が集まったデモを交えた展示に多くの来場者が集まった

 自動車の機能や性能をソフトウエア更新で高めるSDV(ソフトウエア定義車両)が注目される中、車載ソフトを手掛けるイーソルが「イーソルテクノロジーフォーラム2025」を開催した。「走るスマホ」として存在感を高めるSDV。創業50周年記念イベントとして、同社のSDV戦略と技術アプローチが披露された。

 権藤正樹社長CEO(最高経営責任者)兼CTO(最高技術責任者)は、日本のデジタル赤字拡大に危機感を示し、「日本企業はグローバル市場を前提としたソフトウエア・データ戦略が必要。SDVを含む『SDX』は制覇されておらず、まだチャンスがある。今こそワンチームになろう」と呼び掛けた。

 他にも、ウーブン・バイ・トヨタのジャンフランスワー・カンポーVP(バイスプレジデント)が登壇。ユーザー体験を「感情」と位置付け、機能変更前の感情的影響評価の重要性を指摘。「オープン化により情報をパートナーと共有し、スピードと品質を実現するツールに投資するべきだ。SDV化によりあらゆるユースケースでソフトウエアの正しさを評価し、良い体験を継続的に保証することができる」と述べた。

 イーソルは近年、OSからアプリケーションまで全レイヤーを統合する「フルスタックエンジニアリング」を提唱している。佃明彦執行役員エンジニアリング本部長は「今後、SDVが量産化される中で、システムは部品の寄せ集めではなく、相互作用で成立する」と強調。「ソフトウエアは、それぞれの分野で知見を持つ専門家同士が連携し、隣接するレイヤーを理解し組み立てていく必要がある。そのためには、専門家を含む小さなチームをネットワーク化することが重要」と話した。

 イベントに合わせて各種ソリューションも展示。リアルタイムOS「eMCOS」が自動車の機能安全規格「ISO26262」の最高水準であるASIL-Dに認定されたことも発表。権藤社長は「これまでパートナーや顧客に支えられ、50周年という節目を迎えることができた。次の時代に向けて、さらに強固なエコシステムを構築していきたい」と力を込めた。

<執筆・構成=半導体ナビ