2025.09.11 経費精算大手のコンカー、AIエージェントで出張管理を効率化

事業戦略について説明する橋本祥生社長=東京都千代田区

登壇した(左から)コンカーカスタマー&ソリューション統括本部プロダクトマーケティング部の舟本憲政部長、橋本祥生社長、サービス統括本部テクニカルサポート本部の遠藤智範本部長登壇した(左から)コンカーカスタマー&ソリューション統括本部プロダクトマーケティング部の舟本憲政部長、橋本祥生社長、サービス統括本部テクニカルサポート本部の遠藤智範本部長

 経費精算サービスで世界最大手の米Concur Technologies(コンカーテクノロジーズ)の日本法人、コンカー(東京都千代田区)は、AI(人工知能)やビッグデータを活用した新機能を2025年末以降に相次ぎ投入する。自律的に業務をこなす「AIエージェント」を用いて出張管理を効率化する機能などを用意する。同社は先端的な機能を生かし、間接費業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を後押ししたい考えだ。

 独SAPグループのコンカーテクノロジーズは、経費精算管理で30年以上の実績を持ち、この市場で49%のトップシェアを誇る。1億人以上のユーザーから、年間に約10億件の経費明細と約3000万件の出張データが生み出されているという。

 東京都内で開かれた事業戦略説明会でコンカーの橋本祥生社長は、「経費精算のない世界」の先を見据え、AIとビッグデータを活用した企業の成長と変革を支える存在へと進化する方針を示した。「ビッグデータとAIエージェント、AIチャットボット(自動応答システム)により、人手を介さずに究極の業務効率化とガバナンスの強化を図り、戦略的データインサイト(洞察)の提供を実現していく」という。

 今後は、3つのステップで「Vision2028」と題するビジョンの実現を目指す。まずは手入力なしで経費精算業務が完結する世界を追求。続けて、「自律運用」や「データの民主化」というステップに進む。

 年末以降に投入する機能の1つが、SAP独自の生成AI「Joule(ジュール)」と対話するだけで出張手配を完了できる「Booking Agent」。出張者の好みや会社の規定を反映した最適なフライト(航空便)を提案してくれる。加えて、世界各地にいるチームメンバーのグループ出張の調整を自動化する「Meeting Location Planner Agent」を用意する。AIエージェントが出張費用の計画と見積もりを行うとともに、メンバーが会合する最適な場所も設定。宿泊施設やフライトの提案まで行ってくれる。

 経費管理向けでは、申請前にAIが抜け漏れを自動検出しチャットでサポートする「Expense Report Validation Agent」の提供を予定している。正確でコンプライアンスに準拠した経費精算レポートの提出を支援し、差し戻しを削減することで、経理部門の負荷を軽減する。また、AI が自動的に読み込んだ会社規定を分析し、規定の情報を申請者に表示して遵守をサポートする「Policy Trip Tips」も用意する計画だ。

公共向けビジネスにも注力

 同社は発表会で、公共分野向けサービスを拡充する方針も示した。少子高齢化に伴う職員数の減少という課題に直面する自治体は、デジタル技術で煩雑な旅費精算業務を効率化する対応が急務となっている。国家公務員が出張する際の日当や宿泊料のルールを定める4月施行の改正旅費法も、デジタル化を促すきっかけとなっている。

すでに公共分野のニーズに応えるプラットフォームを整備するとともに、この分野に精通したパートナー企業との連携にも注力。公共機関や学校法人への導入実績を着実に拡大してきた。

 10の自治体で行った実証実験では、業務を50%超削減する効果が見込まれることを確かめた。橋本氏は「民間で培った間接費業務DXのノウハウにより、日本の公共団体の競争力強化に寄与できると考えている」とも強調。28年までに売上高に占める公共向けの比率を約30%に高めることを視野に入れているという。