2025.10.25 日本ガイシ、NEDO 量子産業化事業に採択 複合ウエハー技術で光量子コンピューター開発に貢献 

SAWフィルター用複合ウエハー 

 日本ガイシの複合ウエハー技術が、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の量子産業化の事業に採択された。長年培ってきた複合ウエハー技術を活用して光集積回路の開発に取り組む。プロジェクトを通じて光量子コンピューターの実用化を加速し、次世代AI(人工知能)を支える情報処理基盤の構築に貢献したい考えだ。 

 生成AIの進展で世界のデータセンターの消費電力が増加し、環境負荷やエネルギーコストの上昇が社会問題となっている。これらの解決策の一つとして、量子コンピューターの高速な計算処理が注目されている。 

 従来の量子コンピューターは超低温で動作し、巨大な冷却装置と膨大なエネルギーコストが伴う。一方、光方式の量子コンピューターは室温で動作するため冷却装置が不要で、設置スペースの大幅削減や省エネルギー化にもつながる。加えて既存の光ファイバーとの親和性も高いため、社会実装に向けた有力な次世代技術と期待される。

 
 同社がSAWフィルター用複合ウエハーで培ってきた直接接合技術を活用。同技術の特徴は▽熱膨張係数の低いシリコンと高品質な単結晶圧電基板を接合することで、圧電結晶の機能を損なうことなく温度特性の改善▽精密研磨加工技術により圧電体層(機能層)の厚みばらつきを低減▽ウエハーサイズは6インチまで対応―など。室温で接着剤を使用せずに異なる材料を高精度で貼り合わせられるため、TFLNの材料特性を確保した高い信頼性を実現できる見込みだ。 

 また、機能層をナノメートル単位で均一に薄膜化できる超精密研磨技術により、ウエハーの薄型化に貢献。これらの技術をもとに8インチサイズのTFLNウエハーを開発し、量産時のコスト削減や、競争力強化にもつなげる。 

 プロジェクトには、同社のほか、山寿セラミックス(愛知県尾張旭市)、オキサイド、浜松ホトニクスが参加している。

 
 今回の取り組みは、NEDOのポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業(量子産業化)の「光量子コンピュータ産業化に向けたTFLN(薄膜ニオブ酸リチウム)光技術の研究開発」の一環。これまで原理実証段階にとどまっていた光量子コンピューターの実用化を目指す。国産メーカーによる世界標準化を進めることで、強固なサプライチェーンの構築を図る。