2026.02.25 東芝、「量子インスパイアード計算機」を自律移動ロボットに搭載 世界初の実証に成功

人が行き交う複雑な環境でもスムーズに走行する自律移動ロボット(提供:東芝)

 東芝は、トヨタ自動車とデンソーが共同出資する半導体開発企業のミライズテクノロジーズ(愛知県日進市)と連携し、東芝独自の量子インスパイアード最適化計算機「シミュレーテッド分岐マシン(SBM)」を自律移動ロボットに搭載し、有効性を共同で実証したと発表した。量子インスパイアード計算機を移動体の内部に組み込み、その制御に直接適用する事例は世界で初めてという。

 量子インスパイアード最適化計算機は、量子計算の原理を応用したアルゴリズムにより、複雑な組み合わせ最適化問題を高速に解く技術。量子コンピューターのような専用ハードウエアを必要とせず、FPGA(書き換え可能な集積回路)やGPU(画像処理半導体)などの既存のハード上で動作できる点が特徴だ。

 実証では、ミライズテクノロジーズが開発した自律移動ロボットに、東芝開発のアルゴリズムを実装したFPGAを搭載。動く複数の障害物を回避しながら経路を選択するという走行実験を実機で行い、リアルタイムで自律移動できることを確かめた。

 新開発のアルゴリズムは、SBMを活用した「多体物体追跡アルゴリズム」。複数の人や車が同時に動いたり、物体が重なって見えなくなる現象「オクルージョン(遮蔽)」が発生したりする環境でも、対象を見失うことなく追跡し続ける点が特徴だ。

 SBMが持つ広大で高速な探索能力を生かし、検出物体と追跡物体の「1対1」のマッチングだけでなく、潜在的な「1対多」を見つけることで、オクルージョンの発生箇所を特定できるようにした。これにより、オクルージョンが発生しても再追跡が可能となり、物体の移動予測の精度が向上したという。

 人手不足を背景に、物流などの現場で自動運転車や自律移動ロボットの需要が拡大する傾向にある。こうしたシステムでは、カメラや高精度センサー「LiDAR(ライダー)」で取得した周囲環境をもとに、「検出・追跡」と「経路計画・意思決定」を短いサイクルで実行し続けることが不可欠だ。ただ、移動体に必要な機器を搭載する際には、サイズや消費電力、コストといった制約を満たす必要がある一方、求められる処理は年々高度化しており、両立が課題となっていた。

 今回の成果は、自律移動体の社会実装を後押しする成果として注目が集まりそうだ。両社は今後、自動運転車やロボットなどの自律制御の分野で、実証した組込み向け量子インスパイアード最適化計算機の応用範囲をさらに拡大したいとしている。