2026.07.09 【電子部品技術総合特集】京セラ、AIサーバーの高速・高信頼データ通信を支える業界最高レベルの低ノイズ(位相ジッタ30fs)を差動クロック用水晶発振器で実現
京セラは、位相ジッタ30フェムト秒(fs)という業界最高レベル(※1)の低ノイズ性能を実現した差動クロック用水晶発振器「Xシリーズ」を開発した。AIサーバーや次世代ネットワーク機器向けの高速・高信頼なデータ通信を支える中核デバイスとして注目される製品だ。
5Gネットワークの拡大やAIデータセンターの高速化が進む中、通信機器にはさらなる高速化と安定性の両立が求められている。特に、高速データ通信ではわずかなノイズや信号のずれがビットエラーの原因となるため、信号タイミングのばらつきを示す「位相ジッタ」の極小化が重要だ。加えて、通信速度の向上に伴い、高周波対応へのニーズも一段と高まっている。
今回開発の製品は、こうした市場要求に応え、位相ジッタを極限まで抑えた低ノイズ性能と高周波帯域での安定動作を確保。さらに独自の素子設計技術による小型化も実現した。
本稿では、低ジッタ化に加え、小型化と高周波化を両立させた設計技術について紹介する。

高周波時代を支える独自ブランク技術
スマートフォンやAIサーバー、通信インフラの高速化を支える「水晶デバイス」。その性能を左右するのが、内部に組み込まれる極薄の水晶片(ブランク)だ。周波数が高くなるほどブランクは薄くなり、例えば156.25MHzでは厚さわずか約11μmという繊細さが求められる。
当社は、この極薄化ニーズに応えるため、フォトリソ加工と独自の「プラズマCVM技術(※2)」を原子単位での精密加工を可能とし、水晶材料にダメージを与えることなく高精度なブランク製造を実現した。プラズマCVM技術は、プラズマ中の中性ラジカルと表面の化学反応を利用することで、従来の機械加工では難しかった“無負荷加工”を可能にするのが特長である。これにより、近年ますます進む高周波化に対応しつつ、品質の安定化を実現できる。
さらにウエハ表面の微細な凹凸を高精度に測定し、プラズマを緻密に制御することで加工ばらつきを2nm以下、つまり1mmの50万分の1という驚異的なレベルまで低減させ、ウエハの均一性を飛躍的に高めた。この超精密加工は、あらゆる電子機器において正確な時間を刻む「水晶」本来の特性を最大限に引き出す設計・生産を可能にした。
これにより、時間信号のずれを極限まで抑える位相ジッタの極小化 ――Xシリーズの位相ジッタ30フェムト秒(fs)という業界最高レベル※1の低ノイズ性能を実現し、小型化と高周波化の両立という次世代通信に不可欠な高性能化に成功した。

独自プラットフォームで長期供給を可能とする柔軟設計
当社が展開する水晶デバイスの安定供給を支える独自技術「プラットフォーム構造」をXシリーズにも採用した。本構造は、水晶振動子とICを一体化した小型の「ヘッドユニット」と、ガラスエポキシ製の「ボトムベース」を組み合わせる独自設計が特長で、2016サイズの小型品から2520サイズ、3225サイズまで、幅広い製品サイズに柔軟に対応できる。
さらに、ヘッドユニットに採用されるセラミックパッケージも自社で設計・生産し最適化することで、さらなる小型化と高性能化を実現している。本構造の強みは、先端材料を用いた高精度なヘッドユニットにある。製品サイズのトレンド変化にも迅速に対応でき、長期にわたる安定供給を可能にする設計となっている。
加えて、主要部材をヘッドユニットに集約したことで、サイズが異なる製品間でも共通材料の活用が可能となり、生産効率を向上。リードタイムの短縮にも大きく貢献している。
市場の変化に強い柔軟性と、供給の途切れを防ぐ設計思想-京セラのプラットフォーム構造は、次世代電子部品の安定供給を支える構造といえる。

従来品比約42%削減の低消費電流を実現
156.25MHz(LV-PECL出力)においては、従来品50mA Typ.に対し、42%削減の29mA Typ.を実現。新型の差動出力発振ICを採用することで消費電力の削減に成功した。これにより急速に増えているAIサーバーなどの省電力化に大きく貢献できる。
技術融合で切り拓く次世代デバイス
京セラ、“複合力”で高付加価値化へ
当社は、人工水晶の育成から、フォトリソ加工とプラズマCVMを融合した高精度加工技術までを一貫して保有。さらにセラミックパッケージの設計・生産を自社で手掛け、小型化と信頼性向上を追求している。
これらの技術を融合し、総合力で開発した差動クロック用発振器Xシリーズは、今後大きく伸長するAIサーバーの低ジッタ化および電力消費量の低減、さらに安定供給を可能とする量産能力でAIサーバーの進化に貢献する。
※1:差動クロック用水晶発振器312.5MHzの周波数、3.3Vにおいて(2025年12月 京セラ調べ)
※2:プラズマCVM (Chemical Vaporization Machining)









