2026.07.21 パナソニック環境エンジ、半導体工場向け排水処理・資源回収事業を本格展開
新規事業拡大に力を入れると語る高さ取締役(後方の装置がレアループ実証機)
パナソニック HVAC & CCのグループ会社であるパナソニック環境エンジニアリング(大阪府吹田市)は、半導体や電子デバイス工場向けに、金属回収と排水処理に加え、半導体の生産工程で必要な薬液、ガラス基板への銅めっきプロセスをカバーした「排水処理・資源回収事業」を本格展開する。
水・空気・土・エネルギーの供給・浄化・再生事業を手がけ、半導体・電子デバイス業界における資源循環・環境負荷低減ニーズの高まりを背景に、パナソニックグループのリチウムイオン電池工場向け設備で培った技術を生かし、金属回収をはじめとした排水処理事業などを本格展開するもの。
新規事業のうち、ビジネスを本格スタートさせたのが金属回収で、化学物質を多く含む廃液から有価金属を効率的に回収するユニット型金属回収装置(RARELOOP/レアループ)を、2026年4月から発売している。
電解技術を用い廃液中の銅イオンを再利用可能な固形金属として回収する装置で、将来的には銀やスズ・ニッケルなど他の貴金属の回収を目指し、技術開発を進める。 開発した装置は、従来の大型プラントシステムとは異なり、限られた工場スペースへの設置を可能にすることで、初期の導入ハードルや運用でのメンテナンスコストを低減できる。
さらに、回収した銅を資源として売却することで、産廃処理費の削減にとどまらない新たな収益創出にも貢献する。
電解槽・電源装置・総排水ポンプなど一体化した装置で、1日当たり約1.5tの処理能力を持ち、資源として有効な約15kg/日の銅を回収できる。
365日稼動させた場合、銅売却益は約1000万円が見込め、本体・施工費込みで約5000万円の導入コストがかかるものの、高額な産廃処理費がかからないことも含め、同社試算で投資回収年数は4.1年で済む。
排水処理プロセスの低コスト化技術も開発
難処理廃液を独自の凝集技術と分解技術で処理する廃液処理装置を開発した。半導体や電子デバイス工場の排水で特に課題となるのが、製造工程でさまざまな薬品が混ざり合うことで発生するナノ粒子やスラリーを含んだ「難凝集廃液」と、アミンなどの有機窒素を含んだ「難分解廃液」。
従来の排水処理手法では、難凝集成分の分離に多量の薬品を投入せざるを得ず、また難分解物質の処理には多くの工程と時間を要するため、設備の大型化がコスト増大の要因となっていた。
この課題に、同社は独自の電気化学反応技術を応用し、薬品をほとんど使用せず、難凝集廃液内のナノ粒子やスラリーを効率よく凝集・分離できる技術を確立した。これにより、薬品使用量を大幅に削減し、排水処理プロセスの低コスト化に貢献する。
さらに難分解廃液に対しては、独自の酸化還元促進機構と次亜塩素酸生成技術を組み合わせることで処理を高速化し、装置の小型化を実現した。今後2~3年後をめどに事業化を目指す。
レジスト剥離液は年度内量産化
薬液事業では半導体の後工程向けに環境負荷の低いレジスト剥離液を開発した。26年度内の量産化を目指す。
半導体製造の後工程(パッケージ工程)では、回路を形成する際に使用される保護膜(レジスト)を、工程完了後に特殊な化学品で完全に除去・剥離する必要がある。
ただ、近年の半導体回路の微細化に伴いレジストの完全除去が困難になり、薬液使用量の増加や処理時間の長期化が工場側の大きな課題となってきた。
同社はこれに対して、これまで液晶パネル向けに培ってきた薬液の設計ノウハウを応用し、環境負荷が低く、高い剥離性能(ハードベイク対応)、長寿命で低温・高速で処理が可能な独自のレジスト剥離液を開発した。
これにより、薬液の交換サイクルを延ばし、使用量の低減と環境課題への対応を実現できる。
また、次世代半導体パッケージのコア材料として世界的に注目を集める「ガラス基板」に対する独自の銅めっき技術も確立した。 現在主流である樹脂系材料は、AI(人工知能)半導体の進化に伴う熱や応力により、反りや歪みといったさまざまな課題が表面化している。
ガラス基板はその代替として期待され、高精度に開けられた貫通穴(スルーホール)の内壁に銅を強固に密着・成膜させる工程は、極めて難易度が高い。
同社では、ガラス表面にスズを含む金属酸化物中間層を施すことで銅を強固に密着させるプロセス技術を開発。スルーホールの内壁まで均一に銅をめっきすることに加え、パッケージ基板の大型化へも対応した。
さらに、次世代の半導体パッケージとして期待される「ガラス基板」向けに、銅めっきの均一化と密着強度の確保を両立したプロセスを確立した。28年度ごろの量産化を目指し、準備を進める。
同社では、こうしたソリューションを組み合わせ、高度化する生産課題や資源循環ニーズに対応し、事業拡大につなげていく方針だ。
排水処理・資源回収事業で30年度50億円目指す
昨今、AI技術の急速な普及に伴い、半導体や電子デバイス工場の新設や拡張が世界規模で進む。一方、製造工程で使用される剥離(はくり)液などの薬液使用量の増加、それに伴う排水処理の高度化、さらには産業廃棄物の処理コスト増大などが大きな課題となっている。
同社はこれまで、リチウムイオン電池や液晶パネル工場で、排水処理設備やレジスト剥離工程に用いる薬液の供給・リサイクル技術を提供してきた。
ここで培ってきたノウハウと新たな独自技術を組み合わせ、半導体や電子デバイス工場の生産ラインにおける「入口(薬液)」と「出口(排水処理・金属回収)」それぞれに、最適なソリューションを提供し、工場の環境課題と経済性の両立に貢献していく。
高崎真一取締役専務執行役員事業開発統括部長は「2030年度に向けて新規事業100億円の創出を重点的に目指す。このうち排水処理・資源回収事業で50億円を目指す」考えだ。
同社では、工場向けソリューションとして日系メーカー向けへの展開を中心としてきたが、事業拡大に向け「海外展開も加速していきたい」(高崎取締役)と話す。








