2026.06.12 高度なIT基盤力や実行力、グループ内外で価値創出 外販売上30年500億円へ パナソニック デジタル 

合同取材で、新生パナソニック デジタルの成長戦略を語る阿部社長 

 パナソニック デジタル(阿部裕代表取締役 社長執行役員)は、4月1日の発足以降、ITの価値を最大化しグループ経営に貢献するとともに、培ってきたITソリューション技術の外販を強化し、PX(パナソニック トランスフォーメーション)の中核を担っていく。

 2030年には外販売上高を現状の300億円弱から500億円へ拡大し、外販比率3割以上を目指すほか、調整後利益率10%を目指す。

 同社は、パナソニックグループの情報部門を担っていた旧パナソニック インフォメーションシステムズとパナソニック ソリューションテクノロジー、パナソニック ネットソリューションズの3社を統合して発足した。

 統合した新会社の国内社員数は約2200人。3社に加え、パナソニックグループ各事業会社のIT部門のスタッフも加わっている。

 パナソニックグループ全体のIT部門に携わる人員は約2600人のため、新会社にはグループの約85%を占めるIT部門のスタッフが集約したことになる。

 新体制がスタートしたのに合わせ、6日には阿部社長が合同取材に応じ、今後の成長戦略の方向性などについて説明した。

 阿部社長は「グループ内にとどまらず、外販についてもさらに伸ばしていく。パナソニックグループの方針としてソリューション領域を伸ばしていく方針だが、当社もこれに貢献し、外販ビジネスを進めていく」と話す。

 パナソニックグループ内に向けては「大きな基幹システムを構築するなどコングロマリットの事業体であるため、幅広いビジネス分野の中でさまざまな業務の知見を持ったメンバーが、業務の企画、構想、運用まで一気通貫でやってきた」(阿部社長)と話す。

 このため、外販ビジネスを拡大させていく上でも「内と外でうまくシナジーを出していきたい。グループ内については複雑な会社の中でどうやってシステムを作ってきたか、カスタマイズをどう減らしてきたか、皆さん非常に興味のある分野でもある。内部でのノウハウをグループ内だけでなく外部の顧客に提供したい」(阿部社長)考えだ。

 加えて「パナソニックグループの中では重たい仕組み(メインフレーム)もまだ残っているので、重たい所を新しい軽くて速いものに変えていくことも当社の課題だ。外部の顧客は早くて軽いITを望まれるので、こういう知見を中に取り込んでいくことで相乗効果を出していく」(阿部社長)とする。

 グループ内部と外部顧客への貢献という二つの目標実現に向け、同社の強みを生かしながら統合シナジーを発揮し、価値創造に取り組んでいく。

新会社の強み生かし価値創出

 新会社の強みとして、阿部社長は基盤力、実行力、市場価値が高い提案型の営業力の三つを挙げる。

 基盤力については「国内でもグループ12~13万人が使う大きな基盤をセキュリティーも含めサポートする運用力、共通基盤を構築する力、またグローバル5極にあるミラー組織と連携し、グローバル力を培ってきた」(阿部社長)ことが強みとする。

 実行力では「昨今のプロジェクトは非常に難しくなってきているが、品質・適正コスト・納期(QCD)の面で、しっかりやりきるというノウハウ、スキルが身についている」(阿部社長)とする。

 あわせて、グループ全体の多岐にわたる事業に関する業務知識を知っているメンバーがITを構築する点も強み。「単純にITを知ってソリューションを提案するのではなく、業務を知っているからこそ提案していける領域がある」(阿部社長)と話す。

 提案力では「顧客にとって本当に価値につながるのか、単なるERP(統合基幹業務システム)を導入するということだけでなくて、その先にどんな価値を提供していくのかということまで考えた提案力にわれわれの強みがある」(阿部社長)とする。

26年度は組織全体最適目指し成長に備える

 25年度までは、統合前の3社でそれぞれ異なる組織、人事制度だったものをどこまで整合させるかといった基礎固めの段階だったが、26年度からは「部分最適から全体最適に移る重要なフェーズ」(阿部社長)と位置付ける。 とくにPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション/合併・買収後における企業価値最大化に向けた経営統合プロセス)の実行をしっかりやりきる体制を整えた。

 「これができると来年度以降、事業拡大や競争力の加速につながり、30年外販売上げ500億円の達成につながる。この1年である程度のところまで持っていくことが重要だ」(阿部社長)と話す。

 また、国内のIT外販を担当していた旧パナソニックソリューションテクノロジーのメンバーが、子会社のパナソニック デジタル上海に出向する一方、中国のスタッフが日本に常駐するといった国内外の人材交流も進み始めているという。

 「今後中国に限らず積極的に(こうした交流を)進めていきたい」(阿部社長)考えだ。国内外で人材交流を活発化させ、外販部門の価値創出を最大化させていく。

 加えて、外販における提供価値を高めるシステム・ソリューション開発も進み始めている。

 その一つの例が、ビデオ管理システム「ArgosView」と、生成AI(人工知能)を活用した映像解析ソリューション「WisSight生成AI」を連携した監視ソリューションの開発だ。

 転倒や不審物、設備異常などの検知から通知・レポート化までを自動化し、省人化と高度化を実現する。

 このソリューションは旧パナソニック ネットソリューションズのArgosViewと、旧パナソニック ソリューションテクノロジーの生成AI監視ソリューションを連携させたもので、新たな価値提案につながるもの。

 これまで、各システムは外部工事を委託していたが、旧パナソニック インフォメーションシステムズには、こうした設備・システム工事が可能な資格者がいるため、「パナソニック デジタルオールインワンで提供できるソリューション」(阿部社長)となる。

 「こういう掛け合わせのソリューションや、クロスセルを含めて、現場の皆さんが考え進めているのを見て、現場で良い非常に大きな化学反応が進み始めている」(阿部社長)と手ごたえを感じている。

新スローガンで一体感醸成

 企業価値の向上や生産性向上に向け、エージェント型AIも含め、AI活用による業務改革を加速させていく。

 「(従業員に向け)全社運営方針として、AI Everydayと発信したが、松下幸之助創業者の『日に新た』を、現在に置き換えるとAIを活用し、昨日よりも今日、今日より明日、お客さまに向けどう進化していくのか、ということを全社員で考えていく。文房具としてのAI活用から、エージェント型AI活用で業務改革を促し進化していけるようにしたい」(阿部社長)と話す。

 同社では、全社員から公募して新しいスローガン「つなげる、デジタルの力で。」を制定した。「海外でも英語版、中国版に直し、これをパナソニック デジタル全社員が使っていく」(阿部社長)とし、グローバルで一体感を醸成しながら成長を加速していく。