2026.08.31 【ソリューションプロバイダー特集】ソリューション各社、AI実装加速 業務・現場へ活用領域を拡大

来店客のしぐさや迷いをAIが読み取り、好みに合いそうな商品を提案する日立グループの未来店舗「IKUKO Mart」。2035年の店舗を想定したショールームで、AI活用が小売りなど身近な現場にも広がる姿を示した=東京都江東区来店客のしぐさや迷いをAIが読み取り、好みに合いそうな商品を提案する日立グループの未来店舗「IKUKO Mart」。2035年の店舗を想定したショールームで、AI活用が小売りなど身近な現場にも広がる姿を示した=東京都江東区

Dynabookが6月に発表したAI PCの新モデルDynabookが6月に発表したAI PCの新モデル

安全な基盤と伴走支援を強化

 企業のIT投資は底堅さを保ち、生成AI(人工知能)の活用は試行から業務・現場への実装へ進んでいる。ソリューションプロバイダー各社はAIエージェントやフィジカルAIを重点に、製造、建設、教育、自治体、オフィスなどへ提案を広げる。AIの安全利用を支えるセキュリティーやネットワーク、クラウドとオンプレミスを組み合わせた基盤整備も急ぐ。Windows11移行などの特需反動や機器調達難を見据え、運用・保守、ストック型サービス、伴走支援を強化し、継続的な成長につなげる動きが広がっている。

AI実装を本格化
 AIエージェントの開発や提供が相次いでいる。MODEは、利用者の質問に答えるAIアシスタントから、定型業務を自律的に進めて報告するAIエージェントへ展開する。IoTを通じてセンサーやカメラの現場データをAIに取り込み、工事の進行管理、鉄道の監視・保全などに生かす。建設分野では、数カ所で始めた活用が数十カ所へ広がる例も出てきた。

 NECネクサソリューションズは、各部門で少なくとも一つの業務をAIへ置き換える「クライアントゼロ」を進める。電話対応AIエージェント「Den.Ai」は公共施設で実利用が始まり、ホテルや医療機関、BPOへの展開を目指す。日本事務器は、自社製品への機能追加、社員の業務活用、顧客の活用支援の3軸でAIを推進する。電子カルテの退院サマリー作成や手書き帳票のデータ化などを進め、「社員一人一人にAIの相棒を1人」付ける姿を描く。

 OSKは11月投入予定のDX統合パッケージに帳票要約、商談要約などの生成AI機能を前倒しで搭載する。次期製品ではAIがマニュアルや動画を横断して自己解決を助ける機能を計画し、MCPを使って業務データへ安全に接続する基盤も研究する。日立ソリューションズはAX(AIトランスフォーメーション)を全社で推進する。社内コンテストには1809件の応募があり、200件超の優良事例を創出した。2026年度はAIを業務プロセスへ組み込む段階に移り、AIエージェントやAI駆動型開発の適用を広げる。

製造・社会領域へ展開
 AIの活用領域は、製造設備や社会インフラなど現実の世界へ広がる。NSWはフィジカルAIを重点施策に掲げ、現場データをAIで分析し、判断結果を現場へ戻して改善する一連の循環を高度化する。4事業本部による全社横断チームを設け、大手製造業との案件や国内外の概念検証を進める。デバイス、組み込みシステム、SI、サービスまで手がける強みを生かし、小さな単位から導入できる提案を目指す。

 NECプラットフォームズも、自社の開発・生産現場でフィジカルAIを実践する。データやAIを共通言語に経営と現場をつなぐ「NEPS3.0」を進め、熟練者のノウハウ継承や設備データを使った生産管理を高度化する。蓄積した成果を顧客向けのソリューションやコンサルティングへ広げる。

 東芝は東芝デジタルソリューションズの統合を機に、電力、鉄道、防衛、製造などの領域知識へAIや量子技術を実装する。製造業向け「Meister」シリーズでは、設計・計画から調達、製造、保守・サービスまでを支援し、生成AIで調達価格を推定する機能も取り入れた。量子技術も研究開発から事業化へ移し、シミュレーテッド分岐マシンや量子暗号通信の展開を加速する。

 内田洋行は教育、自治体、オフィスで人とデータを軸に新市場を開く。学校で培ったゼロトラストや統合ID認証、生成AIの知見を自治体や民間へ広げ、オフィスでは人の居場所、会議室、設備のデータを快適性や生産性の向上に生かす。Dynabookは法人向けAI PCを投入し、生成AIの導入を伴走型で支援する。ドライブレコーダーを活用したテレマティクスサービスも、データ活用事業として拡充する。

安全な利用基盤を整備
 AIの実装が進むほど、安全性、運用コスト、データ管理が重要になる。三菱電機デジタルイノベーションは、企業が安全かつ低コストでAIを使えるマルチLLM(大規模言語モデル)対応基盤を提供する。製造現場のOT(制御技術)セキュリティーも成長分野と位置付け、三菱電機グループが完全子会社化した米Nozomi Networksの技術を生かす。全社員約6000人のうち4000人以上をAI人財として育成する計画だ。

 NECネッツエスアイは、情報漏えいや不正利用、トークンコストを管理する「ガードレール」を重視する。クラウドとオンプレミスの選択肢を用意し、既存設備の更新や運用の受託を含め、顧客の投資計画に沿った段階的な道筋を示す。ネットワーク、セキュリティー、運用力にパートナーの技術を組み合わせ、構想から価値向上までを循環させる「共創スパイラル」を進める。

 日立ソリューションズは、攻撃への抵抗力と回復力を高めるサイバーレジリエンスを推進する。製品導入やシステム構築に加え、上流コンサルティング、OT、AI関連セキュリティーの引き合いも増えている。リコージャパンはマルチベンダーの技術を組み合わせ、サプライチェーンセキュリティ対策評価制度に対応するソリューションをワンストップで提供する。大塚商会も中小企業が取り組みやすいサービスを整え、事業継続を支える。

ストック・伴走型を強化
 Windows10のサポート終了に伴う更新特需の後を見据え、各社は継続収益を生む事業を強化する。大塚商会は保守などのストックビジネスが2026年上期に2000億円を超えた。「オフィスまるごと」で複合機、クラウド、セキュリティーなど顧客の困り事を幅広く捉え、1社当たり売上高を約1.5倍へ伸ばした。JAPAN AIとの資本業務提携を通じ、現場がAIエージェントを作れる環境や業種別テンプレート、伴走支援も充実させる。

 リコージャパンはITサービス、アプリ、WE(ワークプレイスエクスペリエンス)を伸ばし、導入から運用・保守までをワンストップで支援する。国内SI4社のSEを連携させるほか、26年度はスペシャリストを延べ約1400人育成する。Dynabookはソリューション事業の売上高を約150億円から300億円規模へ倍増させる計画だ。IT端末を導入から運用、廃棄まで担うLCM(ライフサイクルマネジメントサービス)も拡大する。

 内田洋行はWindows11、ネクストGIGA、自治体システム標準化の需要を入り口に、ネットワーク、運用、データ活用へ付加価値を広げる。NECネクサソリューションズはNECネッツエスアイ、NECフィールディングと約1万5000人の体制を築き、業種・業務知識、通信・インフラ、全国の保守・運用力を結集する。

 日立ソリューションズ・クリエイトはモダナイズ、サプライチェーン、セキュリティー、HR、ペイメント、UXの重点6事業を伸ばす。自社導入で得た成果を顧客へ展開する「カスタマーゼロ」を加速し、生成AIの社内実践を「AIプラス」として体系化する。パーソルコミュニケーションサービスはCX(顧客体験価値)とDXの支援を軸に、導入後の伴走サービスを強化する。約500人がCX・DX人材育成を受講し、全国11カ所のセンター網とパーソルグループの顧客基盤を生かして提案領域を広げる。

 各社はAIと現場知見を組み合わせ、導入後の運用や改善まで継続して支える体制を整える。顧客の業務や投資計画に合わせた実装を進め、成長につなげていく。