2026.09.21 【電子部品メーカー・商社/ASEAN拠点特集】日系電子部品各社 ASEAN展開を一段と強化 製販技体制を拡充 インド市場開拓も活発化
多くの日系部品企業が進出しているタイ(バンコク市中心部)
日本の電子部品業界で、ASEAN地域の事業活動が一段と活発になっている。エレクトロニクス市場が世界で成長し、製造業の「脱中国」の動きも強まる中、グローバルな生産・供給拠点としてASEANの重要性が増している。電子部品各社は、製造、販売、技術体制の拡充へ投資を続け、グローバル事業のさらなる拡大を目指す。インド進出も活発になり、高成長が見込まれる市場の開拓に向け、新工場の建設や販売会社の設立が相次ぐ。
日本の電子部品メーカーや商社は、グローバル事業を拡大する最重要エリアの一つにASEANを位置付ける。各社にとってASEANは、製造、販売、技術開発、物流、情報収集など、あらゆる面で重要性が高まっている。
日系電子部品メーカーのASEAN域内での工場進出先は、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インドネシア、シンガポールなど多岐にわたる。営業拠点もシンガポールやバンコクを中核に各国へ広がり、現地でのデザインインを支える技術開発体制も強化している。
ASEANのIT・エレクトロニクス市場は、中国の人件費上昇や米中摩擦の激化、中国政府の規制強化などのチャイナリスクを回避する受け皿としての位置付けも含め、重要度を増している。
自動車業界では、現地生産・現地調達の要請に対応し、タイを中心とするASEANでの生産拡充に力を注ぐ。半導体業界ではマレーシアを中心に大型投資が進む。HDD業界でもASEANは重要なグローバル生産基地に位置付けられる。白物家電や事務機器でも、日系完成品メーカーのグローバルな生産・供給基地として重要な役割を担う。
昨年、トランプ米大統領が打ち出した相互関税政策も、国内外の完成品・完成車メーカーによる部材の現地調達ニーズを押し上げ、部品企業のASEAN追加投資を加速させている。
ASEANでは2020年から21年にかけ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を強く受けた。一部の国で市民への厳格な外出制限が敷かれる厳しい状況となったが、進出する日系電子部品メーカーの生産は20年春から夏を底に回復し、その後も堅調に推移している。
特に24年後半以降は、世界のエレクトロニクス市況の好調さを背景に、各社のASEAN事業も勢いを増す。電子情報技術産業協会(JEITA)の電子部品グローバル出荷統計によると、ASEANを含む「アジア・その他」の電子部品出荷額は、24年度(24年4月~25年3月)が前年度比9%増、25年度が同10%増と好調に推移した。26年度も4~6月累計が前年同期比22%増と大幅に伸びた。月次では24年4月から直近発表の26年6月まで、27カ月連続で前年同月実績を上回っている。
ASEAN加盟11カ国の総人口は7億人を超え、EU(欧州連合)や旧NAFTA(北米自由貿易協定)圏を大きく上回る。高い人口増加率が続き、経済成長に伴って中間層も年々増加していることから、世界の消費市場を支える地域としても期待が高まる。
ASEAN諸国は比較的良好な治安や英語人材の厚みなど、外資系企業が事業を進めやすい環境を備える。勤勉な人材が多い点も地域の特色とされる。
生産拠点の高度化
日系電子部品メーカーのASEANでの工場進出先は多岐にわたる。中でも早くから進出が進んだマレーシアやタイでは、長年の事業活動を通じたノウハウの蓄積と優秀な人材の育成により、工場の高付加価値化が進む。自動化・省力化や生産品目の高付加価値化、部品加工からの一貫生産などを推し進めている。
一方、ベトナムやフィリピンでは、豊富な労働力を強みに、従来の中国生産を代替する輸出型工場として、生産能力を増強する投資が活発になっている。
インドへの工場進出も進む。インド政府が製造業振興策「メイク・イン・インディア」を推進する一方、インド標準規格局(BIS)の認証も厳格化する動きがあり、各社の現地生産はさらに加速する見通しだ。
営業・技術拠点を拡充
日系電子部品メーカーや商社のASEAN営業拠点は、シンガポールやタイを中心に各国へ広がっている。
外資系完成品メーカーやEMSの部品調達機能は、かつてのシンガポール一極集中から変化し、現在は購買機能が各国に広がる。部品各社は顧客ニーズへ的確に対応するため、営業・物流体制の拡充を進め、最適なソリューションの提供を目指す。
成長が続くインド市場を開拓するため、ベンガルールやグルグラムなどに販売会社を開設する動きも活発になっている。
営業拠点へのFAE(フィールド・アプリケーション・エンジニア)やセールスエンジニアの配置強化にも力を注ぐ。開発体制を強化するため、シンガポールなどに本格的なR&D拠点を開設する企業もある。
エレクトロニクス商社では、通常の部品販売に加え、工場の自動化を支援するエンジニアリング事業を強化する企業も多い。自社工場を現地に開設している商社もある。












