2020.09.10 【冷蔵庫特集】在宅増で大容量化進むまとめ買い・冷凍保存ニーズ高まる
まとめ買い、冷凍保存ニーズの拡大で冷蔵庫への関心が高まる
冷蔵庫は、共働き世帯の増加を背景に、まとめ買い需要が拡大していることから、大容量化が進んでいる。新型コロナウイルス感染症の拡大で在宅機会が増えたため、よりまとめ買い・冷凍保存のニーズが高まり、さらに冷蔵庫の大容量化が進みそうだ。また家事の効率化、時短調理へのニーズの拡大で冷凍食材を活用した調理への関心も高まるなど、全般的に冷蔵庫は買い替え提案がしやすい環境が整っている。
冷蔵庫の需要はこのところ年間400万台弱の安定した需要がある。新型コロナウイルス感染症の拡大が影響し、4月以降は苦戦傾向が見られたものの、自粛緩和による店頭への客足の回帰で、徐々に販売も回復してきている。
秋商戦以降においては、進化した最新冷蔵庫のメリットをしっかり訴求することも含めて、幅広い観点で活性化対策が問われることになりそうだ。
冷蔵庫は基本的に買い替え需要が中心の安定した動きを示すが、今期については、新型コロナの影響を含めてやや不透明な状況だ。
ただ昨年度下期は消費税増税の反動減があったことから、前年増ペースでの推移は見込める。
こうした中、冷蔵庫の買い替え需要を顕在化させる商品的な切り口は、多彩な食材を収納できる大容量化や、設置面積に配慮したコンパクト性、鮮度を長持ちさせる冷蔵・冷凍保存性能の進化といったところだろう。
冷蔵庫の大容量化については、401リットル以上の大型冷蔵庫の構成比は着実に高まっており、501リットル以上へのシフトも進んでいる。
昨年度401リットル以上の冷蔵庫の出荷比率は44・5%を占めている(日本電機工業会〈JEMA〉ベース)。
こうした大容量化の背景には、共働き世帯の増加で、冷凍食品や作り置きなど収納する食材が格段に増えたことが影響している。
共働き世帯は年々増加しており、専業主婦世帯(約600万世帯)に比べ、1200万世帯強(18年/総務省)と圧倒的に多い。
共働き世帯では忙しい合間に料理を作ったりするために、冷凍食品の買いだめ、肉・魚・野菜といった生鮮食品のまとめ買いや冷凍保存、作り置きの食材の長期保存で、使いたいときにこれらの食材で手軽に調理を済まそうとする場合が多い。
また、忙しい共働き世帯では、家事時間の短縮・効率化が求められるため、時短調理につながる冷凍食材などの活用について関心が高い。
市場では新型コロナ前から消費税増税もあって外食を控え、内食・中食は増加傾向にあり、新型コロナに伴う在宅時間の増加で、時短調理へのニーズが加速された。
家で調理する機会が増えたことから、冷蔵庫には収納性が求められ、より冷凍・冷蔵技術が進化した付加価値の高い大容量冷蔵庫の提案をしやすい環境になっている。
外出自粛が始まり在宅時間が増えてからは、冷蔵庫の利用も進んだようで、使用実態にも変化が表れた。
シャープのAIoT冷蔵庫のログデータ解析によると、今年4-5月のドア開閉回数は前年同期と比べ約12%アップ、また冷凍室の開閉回数も約7%増加したという。
パナソニックも在宅が増えて調理家電の利用頻度がどれだけ増えたか調べたところ、オーブンレンジ、冷蔵庫、炊飯器が特に増えたと回答するユーザーが多かった。
在宅で調理する機会が増えたこと、また食材のまとめ買いで冷凍保存(長期保存)する機会が増えたことなどが見て取れる。
シャープによると冷蔵庫の開閉回数が増えたことに伴い、消費電力量も約15%アップしたという。より省エネニーズも高まっているということになる。
商品動向
冷蔵庫各社では、冷蔵庫の使用実態の変化に合わせ、進化した冷凍・冷蔵技術や収納性、使い勝手の向上など、様々な視点で最新商品の訴求に力を入れている。
近年、各社の冷蔵庫開発の方向性は、冷凍技術のさらなる進化、鮮度保持性能の向上、大容量ながら真空断熱材採用によるコンパクト性および省エネ性の追求、ガラスドア採用などキッチンのインテリアに配慮したデザイン性、IoT対応の加速など、様々な切り口で商品の進化に力を入れている。
中でもIoT対応は近年加速しており、スマートフォンで冷蔵庫の設定(庫内温度など)や運転状況の確認、レシピ提案、役立ち情報の提供、ほかの家電機器との連携など、新しい使い方の提案が始まっている。
また、冷蔵庫を調理家電の一つとして、冷凍技術などを駆使した〝冷凍調理〟の提案にも力が入る。在宅の機会が増え、時短調理への関心が高まる一方で、料理のおいしさに対する関心も高まっている。
冷凍技術を駆使することで、簡単に、かつおいしく料理を仕上げるという新たな冷蔵庫の提案が、買い替え需要の顕在化にもつながることになる。
パナソニックは、主力商品の6WPXタイプに搭載する通常冷凍に比べて5倍の凍結スピードを持つ「はやうま冷凍」を訴求している。
から揚げやステーキ肉などの食材のおいしい冷凍保存や、〝自家製冷食〟の活用による時短調理提案、〝カット野菜〟活用などを提案する。
三菱電機では、肉や魚などの生鮮食品を生のまま長持ち(最長約10日間)させる「氷点下ストッカーD A.I.」、冷凍ながら解凍いらずで、すぐに調理できる「切れちゃう瞬冷凍A.I.」(保存期間約3週間)、さらに長く(約1カ月)保存できる「冷凍室」と、多様な冷凍機能を搭載するWXシリーズの提案に力を入れる。