2020.09.18 【ASEAN特集】インドネシア既存投資の実現に注力の方針

イクマル・ルクマン副会長

 人口2億7060万人、ASEANの総人口の4割が居住するインドネシアは、新型コロナウイルス感染症の拡大で経済に深刻な影響が出ている。4-6月(第2四半期)のGDP(国内総生産)は前年同期比5.32%減と、1999年1-3月以来の低い水準となった。

 「ロックダウンの影響で、経済活動と貿易が停滞した。今後の投資にも影響が出るだろう」と、同国投資調整委員会(BKPM)投資促進担当、イクマル・ルクマン副会長は懸念を示す。

 BKPMでは20年の投資目標を当初、886兆インドネシアルピア(IDR=約6兆3000億円)としていたが、先頃817兆に下方修正。1-3月は前年同期比と前期比で改善したものの、4-6月実績が前年同期比4.3%減少したためだ。

 コロナ収束の兆しは見えず、インドネシア財務省では21年、最悪のケースで22年まで続くと予想。BKPMは当面、新規大型投資は見込めないとして、既存投資の実現に注力していく方針だ。

 現在、同国は投資の優先分野をシフトし、経済変革を第1次産業から川下の付加価値産業に集中させている。「今後の経済回復を主導し新規雇用を生み出すのは製造、エネルギー、医療、鉱業、インフラ分野」とルクマン副会長は指摘。またこの危機的状況にあっても医療や通信技術、MOOC(大学などがネットを通じ公開している大規模講義)、デジタル、食品、バイオテクノロジー、法律サービス、クリーンエネルギーは成長が見込まれるという。

 投資環境を維持へBKPMは、既存企業が現在保留している事業規模の拡張計画を積極的に支援。またニューノーマルに対応の事業拡張を計画している企業には、新たなインセンティブを提供する。

 さらに医療関連企業には事業許可要件を緩和するとともに、特別な支援サービスを拡大。海外直接投資(FDI)に加え国内直接投資を積極的に誘致して、規模の大小にかかわらず支援を継続。中小・零細企業も積極的に呼び込んで、大企業との提携なども促進していく。

 昨今では米中貿易摩擦の激化を背景に、中国から事業拠点をほかに移す企業が増えており、米国や台湾、韓国、日本、香港の143社がインドネシアへの移転を計画。7社が既に移転を決めており、投投資額12兆ルピア、3万人規模の現地雇用の可能性もあるという。「こうした好機をつかむためにも、我々は土地の価格など競争上の優位性を強化するとともに、インセンティブを明確化、さらにインフラとコネクティビティの整備、人材の質向上に努めていく」とルクマン副会長は述べた。