2020.11.06 表参道にスマートゴミ箱が登場国内で普及目指すフォーステックの竹村陽平社長に聞く

東京・渋谷の表参道に登場したスマートゴミ箱「SmaGO」

 日本有数の繁華街、東京・渋谷の表参道に登場したスマートゴミ箱「SmaGO」(スマゴ)。ソーラーパネルと蓄電池を搭載して稼働し、IoT技術で、たまったごみの量をリアルタイムに確認できる。スマートシティーの足音が、生活の身近に迫ってきたような製品だ。米国発の技術を国内でも広げようとしているのが、IoT機器販売のフォーステック(東京都港区)。スマゴ販売を手掛けるために創業した竹村陽平社長に、普及の戦略などについて聞いた。

竹村 社長

 ―スマゴ販売に至った経緯は。
 竹村社長 スマゴは米ボストンに本社があるビッグベリーソーラー社が10年以上前から製造している。親類から5年ほど前に紹介を受けて、構想を温めてきた。
 日本の街中は、世界で最もごみ箱が少ないと言われることもある。1995年にオウム真理教による地下鉄サリン事件があったことを契機に、街中からごみ箱が撤去されたためだとされる。
 日本人はモラル意識が高く、ポイ捨てをほとんどしない。ただ、近年はインバウンド客が急増し、外国人のポイ捨てが観光公害とまで言われるまでになった。それは、世界中の街中にはごみ箱があるためで、日本は確かに不便な面がある。
 そんな中、スマゴを広めるために、19年4月に当社を立ち上げた。現在は、スマゴの販売に特化している。

ソーラーで発電、ごみを自動圧縮

 ―IoT機器として街中で存在感を出すかもしれません。

 竹村社長 ソーラーで発電して蓄電する。その電力でごみを自動圧縮することで、容量の5-6杯分をためることができる。ごみの量はクラウド上で確認できて、たまりやすい時間を予測できたり、データ集積してごみ箱配置の最適化もできたりする。とはいえ通信料が安い3Gで十分に対応できる。
 一番の大事な点は、ごみをあふれさせないこと。いったんあふれてしまうと、周辺に抵抗なくポイ捨てを誘発させてしまう。ごみの量を的確につかみ、効率的に回収できることが重要だ。回収する回数も減らすことができる。
 当社を設立する以前は、大手のスマホアプリ制作会社に勤務し、米・ラスベガスで開かれる世界最大級の家電見本市「CES(セス)」にも通っては、新しい技術を探すなどしてきた。
 そういう経験を踏まえると、スマゴは技術的にはシンプル。ただ、発電した電力を、圧縮や通信などに効率良く消費していく高度な仕組みがぎっしりと詰まっている。そのため、3週間曇りでも、稼働を続けることができる。
 発電や蓄電能力が年々向上しており、屋外で安定した電源を確保できるというメリットが、様々なビジネス構想の広がりにつながる。通りに置いた瞬間、街中がスマートシティー化できる。スマートシティーへの第一歩として、面白い存在にしたい。
 無線技術を活用したビーコン端末を、スマゴに設置することで、通行人が持つスマホと反応して、人通りの込み具合などのデータを入手することもできるようになる。通り単位のローカルな範囲で、通行量調査などが無人で常時できる。
 災害時の非常用電源として機能させたり、次世代通信規格「5G」の基地局になったりする可能性もある。

 ―スマゴが広告塔になっているのも特徴です。

広告費でコスト削減もできる「SmaGO」

 竹村社長 ごみ箱の設置には3重のコストがかかる。設置費用に、ごみを回収するコスト、さらに回収したごみを処理するコストの三つ。だから、自治体などもなるべく、ごみ箱は置きたくないし、街中もきれいにならない。
 ビジネスを始めるに当たって世界各地の導入事例を視察したが、ニューヨークではミュージカルの広告がラッピングされていた。
 ごみがあふれる場所は人通りが多い。そこでは広告価値が高く、矛盾はしない。
 表参道の人通りは、月間500万人。一時は、ブームになったタピオカのカップなどのごみが多く、商店街の人たちも苦労していた。一方で、人通りの多さ故に、表参道は広告価値が高く、3重のコストをすべて賄えている。あらゆる地域でそううまくはいかないが、多少でも広告費でコスト削減できれば導入しやすくなる。

欧州など50カ国以上で導入

 ―世界での導入実績や、これからの国内での普及戦略は。

 竹村社長 既にヨーロッパなど、50カ国以上の自治体で導入されている。もともとごみ箱がたくさんあった米ニューヨークの繁華街、タイムズスクエアでも数年前に配置され、回収数は半減。コストも半減する効果が出た。
 フランス・パリでも数百台を一度に導入。問題視されていた、ごみ箱に集まるネズミ被害が、減少したことが報告された。スマゴでは、ごみを内部に密閉するため、害獣対策にもなることが分かった。
 国内での普及にあたっては、各地域の一等地などでは、表参道のような広告モデルが横展開できる。そうでない地域では、国や自治体の補助金などを活用して導入を後押しする方法を模索したい。
 表参道でのPR効果があり、既に約20件の問い合わせが寄せられ、導入の交渉を続けている。全国の自治体や民間のショッピングモールなどだ。自治体は、ごみに対する課題意識は高い。人出が多い観光地などで、広告モデルで一部のコストが削減できれば、普及しやすい。
 スマゴの広がりで、ごみ箱のネガティブなイメージを、ポジティブでおしゃれなイメージに変えたい。そうすることが、ごみ問題解決の近道になる。