2020.11.25 【5G関連部品特集】新たなビジネス創出めざす端末・基地局など照準
電子部品メーカー各社は、第5世代高速通信規格「5G」に照準を合わせた取り組みに力を注いでいる。高速・大容量通信である5G通信は、スマートフォンの高機能化促進とともに、様々な産業にイノベーションをもたらすことが期待されている。部品各社は、需要が本格化しつつある5Gスマホや5G基地局、さらに5G応用アプリケーションに向けた技術開発やマーケティングを一段と強化し、新たなビジネス創出を目指す。
5G通信は超高度情報社会に向けた次世代通信方式。10ギガbpsを超える通信速度や、現行のLTEの約1000倍の大容量化などが想定され、IoTの普及を視野に、さらなる多様なサービスへの対応も想定されている。5Gの本格化は、将来の車の自動運転にも大きな役割を果たすとされている。
5Gの商用化は18年から一部、法人向けサービスなどが開始されていたが、19年春に、米国や韓国でスマホ向けの商用サービスがスタート。その後、欧州や中国をはじめ、19年中に多くの国が5Gサービスを開始した。そして日本でも今年20年3月後半以降、主要携帯キャリアによる5G商用サービスが順次開始され、本格普及に向けた体制づくりが着々と進んでいる。
最近は5G市場での主導権を巡り、主要スマホメーカー各社の5G端末の開発・市場投入が相次いでいる。携帯キャリア各社による5G通信インフラ投資も活発化している。
一部、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う5G基地局敷設工事の遅れなどが指摘されているものの、順次、5Gカバー率向上に向けた基地局整備が進展している。今年20年は日本および海外主要各国で、5Gの本格普及に向けた「5G元年」と位置付けられており、さらに21年以降、普及に弾みがつくことが期待されている。
スマホの世界需要は年間15億台前後に達する。スマホの世界出荷台数は16年をピークに、その後は普及一巡や買い替えサイクル長期化により漸減傾向にあるが、際立ってボリュームの大きい市場であるため、電子部品メーカー各社のスマホ市場重視の姿勢に変化はない。
加えて、スマホの5G対応化は、新たな端末価値を向上させ、買い替え需要を促すとともに、搭載部品の一層のハイエンド化を促進することが期待されている。
このため、電子部品・半導体メーカー各社は、5G端末に照準を合わせた技術開発を強化し、高周波・高速大容量に対応するデバイス開発や、搭載部品の一層の軽薄短小化に向けた開発に全力を挙げている。
5Gは4Gと比べ、より高い周波数で超高速通信を行うため、小型基地局(スモールセル)を多数設置する形でのエリアカバーが必須で、基地局数増加が見込まれており、高周波部品各社の5G基地局向けの専用部品開発も活発化している。
5G通信は同時多接続や低遅延の特徴を持つため、IoTの普及を促進させ、新たなアプリを創出させることも期待される。将来の完全自動運転車を実現する上では、車載5G適用も不可欠といわれる。このため、電子部品各社は、これらの5G応用アプリに照準を合わせた先行開発やマーケティングを強化することで、新たなビジネス機会の創出を目指していく。
最近の電子部品市場では、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う企業活動の停滞や消費低迷により、車載用部品や産業機器/設備投資関連部品のグローバル需要が低迷しているが、そうした中でもスマホ用部品のグローバル需要が比較的堅調に推移し、部品各社の業績をけん引している。
直近でも、今夏から生産が本格的に立ち上がった米アップルのスマホ新モデルや、中国主要スマホメーカー各社の堅調な生産が続いている。
最近は、米国政府によるファーウェイ規制の影響から、中国スマホ最大手のファーウェイの先行きなどに注目が集まっているが、シャオミやOPPOといった主要中国系スマホメーカーでは、いずれも中期で積極的な計画を打ち出している。
世界のスマホ市場での端末メーカー間の競争が激化する中で、米国、韓国、中国などのトップクラスの端末メーカーでは、各社ともにデザイン性なども含めた独自性の発揮に従来以上に力を注いでいる。高度な部品設計能力や高い量産品質、グローバルサポート力に優れる日系電子部品企業にとってはチャンスとなる。
部品各社は、5G端末の技術進化や需要拡大に迅速に対応していくことで、継続的なビジネス拡大を目指す。