2020.11.30 太陽光発電や蓄電池などを統合制御東ガスが米企業に出資、新ビジネスを視野

 東京ガスは、太陽光発電や蓄電池などの分散型エネルギーリソース(DER)を統合制御するシステムの開発・販売を手掛けるスタートアップ企業、ヘイラ社(米国マサチューセッツ州)に出資した。防災などの観点から注目されているマイクログリッドなどに用いるシステムで、東ガスグループは、ノウハウを得ながら、国内外でDERを活用した新たなエネルギービジネスを進めていく方針だ。

 東ガスは、100%出資子会社、アカリオ・インベストメント・ワン社(米国カリフォルニア州)を通じて、出資。グループが海外のスタートアップ企業に出資するのは、4例目となる。これまでに、電気自動車(EV)充電器のソフトウエア開発企業や、海洋上に浮かせた風車で発電する浮体式の洋上風力発電の技術会社などに投資してきた。

 マイクログリッドは、太陽光発電や蓄電池、燃料電池、ガス発電機などのDERを活用して、系統から独立して地域の電力需要を賄うことができる小規模なエネルギーネットワークのこと。災害に強く、電力損失が少ないなどの特徴があり、甚大化する国内の自然災害などへの対応として、エネルギー業界で注目が集まっている。

 17年12月に設立されたヘイラ社が開発、提供するのは、多様なDERを、中枢システムを介さずに制御するため、「自律分散型統合制御システム」と呼ばれる。周りのDER同士で相互に通信して、自律的に動作するシステムになっており、DERの追加や削減などが簡単にできる柔軟性が強みだとされている。

 また、中枢システムがないため、一カ所が機能しないだけで、システム全体が停止してしまうといったことが起きないという。トラブル発生時にも、全体に出る影響を最小限に抑えることができ、全体の停電リスクを大幅に下げることが可能だ。

 これまで国内のマイクログリッドは離島など小規模の範囲での導入にとどまっていたといい、「今後の普及、拡大を見据えると、柔軟性や停電のリスク軽減が重要になってくると想定している」(東ガス)として、ヘイラ社への出資を決めた。

 既にヘイラ社のシステムは米国内で複数の販売実績がある。東ガスグループは、DERを統合制御しながら、電力の需給調整やオペレーションをするノウハウを習得。国内外でDERを活用したマイクログリッドなどのビジネスを展開していく考えだ。

 同社は「まだ黎明期であり、様々な可能性を見据えて検討を進めている段階だ」とし、「技術の強みが、ヘイラ社のバリューであり、当社としても、しっかりノウハウを蓄積していきたい」と話している。