2021.01.15 【電子材料特集】各社の事業展開信越化学工業

SLKシリーズ

熱硬化性低誘電樹脂「SLKシリーズ」の量産化投資

 信越化学工業は、第5世代高速通信規格5Gに対応する新規製品の熱硬化性低誘電樹脂「SLKシリーズ」の量産化投資を行う。設備投資額は約30億円を見込む。また、半導体フォトレジスト市場の拡大と進化に応えるため日本と台湾の製造拠点で合計300億円の設備投資を実施する。

 SLKシリーズは、フッ素樹脂に迫る低誘電特性を持ち高強度かつ低弾性の樹脂。5Gの高周波帯域で使用される電子デバイスや回路基板、アンテナ、レーダードーム向けに開発し、高周波数帯(10-80ギガヘルツ)で誘電率2.5以下、誘電正接0.002以下と熱硬化性樹脂としては最低レベルを達成している。

 低吸湿性で、低粗度の銅箔に対しても高い接着力を有するため、FCCL(フレキシブル銅張積層板)や接着剤などへの使用にも適している。高速通信基板のバインダや接着フィルムとして顧客の評価も良好で、拡販も順調に進んでいる。

 今回設営するSLKシリーズの生産能力は第1期分で年産80トン、21年中の稼働を目指す。同社はSLKシリーズを中心に、石英クロスや放熱シートも含め、5G市場の用途開拓を進め、次世代高速通信技術の発展に貢献していく。

 フォトレジスト事業の設備投資は、先端半導体製造に不可欠なフォトレジストの伸長する需要と技術進化に応えるため、技術と供給の両面で顧客の要望に適時に応える能力を拡充する。

 子会社の信越電子材料股份有限公司(台湾雲林県)と信越化学直江津工場(新潟県上越市)で実施する。信越電子材料(台湾)では、19年夏に第1期工場を終了しているが、既に新たな工場棟を建設中で、今回生産設備をさらに増強する。21年2月までの工事完了を目指す。直江津工場でも新たに建屋を建設し、能力増強を進める。22年2月までの工事完了を目指す。

 同社は、高感度のArFフォトレジストや、回路パターンの寸法精度を向上させる多層レジスト材料を開発し量産化。最先端のフォトレジストを顧客に供給している。19年7月に、需要地の一つでもある台湾でフォトレジスト材料の生産を開始した。生産拠点の複数化を実現し、供給安定性を高めている。