2021.02.24 【複合機&プリンタソリューション特集】商業印刷各社、デジタル化加速 トータルソリューション提案

デジタル印刷はオンデマンドで、多様な印刷ニーズに対応する

急ピッチで進む印刷のデジタル化急ピッチで進む印刷のデジタル化

 複合機メーカー各社が、強みのデジタル技術を生かし、オフセットなどアナログ印刷が主流の商業印刷のデジタル化を加速させている。国内の商業印刷は、市場規模が約5兆円と見られているが、デジタル化比率はまだ低く、10%以下。商業印刷業界も今後は、デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)化が求められている。背景には、デジタル化による生産性の向上や人手不足など経営面の課題もある。コロナ禍が、商業印刷業界のデジタル化への脱皮を促進している。

 2月8日から28日まで約3週間にわたり印刷業界最大の総合イベント「page2021」がオンラインで開催されている。同総合展は、今回が34回目だが、コロナ禍で初のオンライン開催となった。テーマに「リセット・ザ・フューチャー」を掲げ、デジタル印刷などDXを大きく打ち出している。商業印刷業界も、デジタル化を加速させ、新たな成長を目指す動きを見せている。

 こうした流れを受け、複合機各社では、培ってきたデジタル技術を生かし、最新のデジタル印刷機や印刷の前工程から後工程までトータルに印刷業務ができるソリューションを提案、商業印刷業界のDX化を支援する動きを本格化させている。

 デジタル印刷では豊富な実績を持つ富士ゼロックスは、商業印刷市場向け戦略機種として「Versant(バーサント)シリーズ」で「Versant 3100 iPress(アイプレス)」など2機種を新たに投入している。コロナ禍での印刷業務のより高い生産性を実現するとともに、新開発の「エアーサクション給紙トレイ」を新開発、採用した。トレイ内にエアーを吹き込み、1枚ごとに用紙を搬送する。凹凸のある用紙や密着しやすいコート紙など、ストレスなく安定した給紙ができる。

 また、印刷工程全体の統合型ワークフローを実現するソフトウエア商品「プロダクションコックピット3.0」を提供している。印刷業務の上流から下流までの全工程を対象として、それぞれの機器の稼働状況と生産余力、予定されている印刷ジョブなどに関する情報を、システム連携により一元的に集約。印刷工程間のジョブの滞留を解消、ワークフロー全体の生産性向上を実現する。

 同社グラフィックコミュニケーションサービス事業本部の鈴木孝義システムエンジニアリング部部長は「商業印刷業界も、コロナ禍でリモートの活用などDXへの意識が高まってきている。印刷ビジネスを、これまでの設備投資という考え方から、経営そのものをどう革新していくかに変わってきている。今後、DX化が加速する。当社は、印刷業のワークフロートータルでお客様のDX化を支援していく」と話す。

 また、同社では、デジタル印刷技術を活用、日本の伝統工芸品である和紙としっくいを融合した新しい和紙などの新商材の開発を製紙会社と連携して取り組んでいる。

 リコーは、基幹業務印刷システムとして高い生産性を実現する高速インクジェット・プリンティング・システム「RICOH Pro VC40000」を1月末から投入した。トランザクション市場向けのシステムとして生産性や用紙対応力を強化している。また、業界最速クラスの毎分200枚の高速を実現した「RICOH DD 5650」を発売、大量印刷ニーズに対応している。リコージャパンでは、商業印刷事業者のビジネス拡大を図るため、「デジタル化の推進による売上げ拡大や企業価値向上に貢献するビジネスモデル」を提案している。

 キヤノンは、プロダクションプリンター「imagePRESS(イメージプレス)」シリーズの旗艦モデル「imagePRESS C10010VP/C9010V」(20年10月発売)の新ユニットとして、検品工程を自動化するインスペクションユニット・A1と画像調整を自動化するセンシングユニット・A1を5月下旬に発売する。販売を担うキヤノンマーケティングジャパンでは「検品工程の自動化により印刷物の検査、印刷作業の大幅な省力化を実現する。印刷業界のDX化を支援するため、商品、サービスの充実を図っていく」(吉田直矢プロダクションシステム企画第二課チーフ)としている。

 コニカミノルタは、自動品質最適化ユニット「インテリジェントクオリティオプティマイザーIQ-501」に、DMなどの1to1印刷(バリアブル印刷)の検品作業を省力化する新たな自動検品機能を追加、3月から提供開始する。これにより、オペレータのスキルレベルによらず検品作業の負荷を低減させ、ワークフローの改善が進む。

 同社は、印刷会社のワークフローを変革させ、付加価値ビジネスへの転換を支援するため、デジタル印刷ならではの「省力化、スキルレス、リモート化」を推進してきた。ハイボリューム領域デジタル印刷システム「AccurioPress(アキュリオ プレス)C14000」を発売する一方、IQ-501で自動調整機能、自動検品機能を強化、さらに今回、バリアブル印刷機能を強化した。

 京セラドキュメントソリューションズもインクジェットプロダクションプリンタ「TASKalfa Pro 15000c」を投入、商業印刷市場のデジタル化を促進している。

 近年、商業印刷市場は、多様な印刷がますます求められるとともに、DX化による経営革新が期待されている。