2019.10.25 【変わるCEATEC】② 近未来のスマートなまち
大成建設は木質建材や緑を多用した西新宿の姿をタブレットに表示した
人と環境にやさしいまち
人と環境にやさしい「近未来のスマートなまち」を実現する最先端のデジタル技術を詰め込んだショーケース―。そんな一面を見せたのが「CEATEC 2019」だ。出展したゼネコン各社は、ビッグデータやAI(人工知能)などを活用して建物内外を快適にする試みを巡って競演。航空会社が開発した瞬間移動技術もまちの進化を予感させた。
会場中央に陣取る企画展示エリア「Society5.0 TOWN」の公共・地方区画でひときわ目立ったのが、大成建設が展示した都市模型だ。同社本社のある東京・西新宿地区を模したジオラマで、備え付けのタブレット端末をかざすと、グレー1色の模型に重なるようにして色鮮やかな都市が映し出された。
高層ビル近くで吹く強風や路上の人の動きなどを模擬的に再現した「デジタル西新宿」を端末に表示。例えば、混雑しやすい地点を把握し、災害時に避難場所へ誘導する案内板の配置計画づくりに役立てることができる。
竹中工務店も未来感漂うブースを設置。センサーから取得した数百種類以上のデータを基にAIが入居者の好みを学習し、空調や照明などを自動的に最適化する「空間制御システム」を紹介した。
新システムは、将棋AIで知られるHEROZ(東京都港区)と共同開発。車と建物の未来をテーマに竹中工務店が設計施工した体験施設「EQ House」を舞台に実証実験を進めている。情報エンジニアリング本部の担当者は、高齢化が進むビル管理人の業務を最新技術に代替する必要性を説いた上で「IoTとAIを活用し、省エネルギーと快適性を両立できる建物を追求する」と述べた。
戸田建設は、風車を海に浮かせる浮体式洋上風力発電で島の消費を上回る電力を作り、余剰電力で製造した水素を外販する構想をアピール。洋上の現場にいるような臨場感を味わえるVR(仮想現実)の技術を発電所の保守点検に生かす試みも提案された。エネルギー事業部の佐藤郁副事業部長は「洋上風力の整備は雇用や税収などの面で地域に経済効果をもたらす」と強調した。
会場では、移動手段の未来像も示した。ANAホールディングスは、離れた場所からアバター(分身ロボット)を操り、あたかも自分がその場所にいるかのように作業や交流を行える瞬間移動技術を展示。「アバターがいるまちづくりを進めたい」(片野坂真哉社長)との姿勢で、タブレットなどで遠隔操作できるコミュニケーション型アバター「newme(ニューミー)」を来年夏までに1000体普及させる方針だ。
まちを縦横無尽に走るタクシーから取得したビッグデータで移動の近未来を創る挑戦にも注目が集まった。挑むのは、日本交通のグループ会社で配車アプリを開発するJapanTaxi。例えば、ドライブレコーダに記録した情報の解析結果から、運転に支障を来す白線のかすれを検出して道路管理者に通達する試みを提案した。
総務省の研究会は、人口減少により40年には今の半数の公務員で行政サービスを支える必要があるとして、AIやロボティクスなどの先端技術を使いこなす「スマート自治体」への転換を求めた。民間の創意工夫がまちの活性化で果たす役割は大きい。(つづく)