2021.03.26 【中国拠点特集】最低賃金動向急速な経済成長や労働者不足で各都市上昇が続く

 中国では、急速な経済成長や労働者不足などを背景に、各都市でワーカーの賃金上昇が続いている。20年は新型コロナウイルス感染症拡大に伴う景気低迷への懸念から大半の都市で法定最低賃金改定が見送りとなったが、実際の賃金は現地政府の指示もあり、着実な上昇が継続している。

 数年前に比較すると、最低賃金の上昇率はやや鈍化傾向だが、絶対金額自体が高くなっているだけに、外資系進出企業にとっては大きな負担となっている。加えて、法定最低賃金に含まれない社会保険料などの付帯費用の増加も重くなっており、全体的に消費者物価の上昇率を上回る賃金上昇が続いている。

 中国各都市の法定最低賃金は、かつては毎年1割以上の改訂(賃上げ)が実施されたが、近年は、2年あるいは3年に一度の改訂に移行している都市が多い。18年には多くの都市で一桁台半ば程度の改訂が実施されたが、19年は多くの都市で改訂が見送られた。また、20年は新型コロナ感染症拡大の経済への影響を踏まえ、江西省や福建省などの一部の地域を除き、法定最低賃金は据え置かれた。

 ただし、実際に支払われる製造業でのワーカー賃金は、19年と20年も着実な増加が続いている。一方、21年は詳細は未定だが、既にいくつかの省や都市が賃金改定への意向を表明している。

 都市別では、上海市が19年4月の改定で月額最低賃金が従来比120人民元アップの2480元となり、中国国内では最も高額となっている(香港を除く)。このほか、深圳市が18年8月の改定で従来比3・3%増の2200人民元に、北京市も19年7月の改定で2200人民元に増額された。

 広東省(深圳市を除く)は、15年に2割を超える大幅な賃金改定が行われ、18年7月に3年ぶりとなる最低賃金改定が実施された。19年、20年は据え置きとなったが、21年は賃金改定が実施される可能性が高いと見られている。

 中国では、過去15年以上にわたる急激な最低賃金上昇で、既に社員の給与レベルは相当な水準に達している。特に最近は、沿海部での人手不足が深刻なため、実際には法定賃金の1.5倍程度の条件を提示しないとワーカーの採用が難しい地区も多い。

 このため、中国進出の日系部品メーカー各社は、生産性向上のための改善活動を従来以上に強化し、生産ラインの自動化・省力化を通じた生産効率向上に全力をあげている。製造設備の内製化や部材調達の見直し、中国内外注の活用などにも力が注がれる。同時に、生産品目の選択と集中による高付加価値製品シフトなどが図られている。

 半面、労働者の収入源は国内消費拡大につながるため、中国国内消費拡大にはプラスとなる。