2021.07.16 【電子部品技術総合特集】 研究開発の取り組み松尾電機・岡田一人執行役員開発部門長

岡田 執行役員

国内向けはカスタム対応強化

 松尾電機は、質の高い成長に向け研究開発にも力を入れている。

 1月に公表した新中期3カ年経営計画(2021~23年度)においても積極的な素材、技術、製品開発により、重点製品の回路保護素子事業を拡大。基盤事業のタンタルコンデンサーも車載ECU向けや補聴器向けに需要が増大しているチップ品の増産体制を整備。導電性高分子タンタルコンデンサーの超低ESR品の量産技術の確立を急ぎ、市場の要求に応える。

 岡田一人執行役員開発部門長は「世界中のお客さまの信頼を得ることができる価値ある技術商品の開発、製造、販売を事業活動の軸とする技術立社であり続ける、という経営理念に基づき基礎研究から製品開発まで自社で手掛けてきた。同時に、さまざまな会社と当社向け材料や加工を共同開発してきた。これらにより小型・薄形、新材料、新工法などもちゅうちょせず取り入れ、業界をリードする製品を市場投入し、顧客の信頼を得てきた。17年3月の福知山工場への生産集約に合わせて開発部門も大阪の本社から福知山工場に移り、開発、生産、品質保証が一体となって新製品の開発、上市に拍車がかかっている」と言う。

 今月、LED電源回路やモーター、ソレノイドの駆動回路、ノートパソコンなどの過電流保護用のリチウムイオン電池向け量産出荷体制を整えた3216サイズの高回路電流対応12.5~20Aマイクロヒューズ「JAJ型」「JAK型」は、通常1、2年かかるのを半年で開発し、一気に量産にもってきた。今回の開発成果を用い、高圧対応の20A、72V以上のマイクロヒューズを同社初の6125サイズで22年3月までに開発を完了する予定だ。

 同社製品群が金属、粉末冶金、電気化学、化学、半導体など、多岐にわたっているため、常に最新情報を積極的に収集している。

 21年度中には材料メーカーとの連携を強めて開発したポリマー材を採用し、導電性高分子タンタルコンデンサーの超低ESR品の量産技術を確立。増大するCPU周りの需要に応える3528サイズから量産に入り、同コンデンサーに本格参入する計画だ。

 岡田執行役員は「国内向けは国内開発、国内生産の利点を生かし、カスタム対応をさらに強化する。海外向けは品質、小型化、薄型化において最先端の製品を、釜屋電機の販売網を生かして市場を開拓する。その中で、顧客要求へのカスタマイズや、新たなニーズを取り込んだ新製品を開発して、顧客価値の向上に貢献していく」と話す。