2021.07.16 【電子部品技術総合特集】研究開発の取り組み日本航空電子工業・中島伸一郎商品開発センター長

中島センター長

開拓・創造・実践が理念 イノベーションの源泉に

 日本航空電子工業は創業以来、「開拓・創造・実践」の理念で、コネクターやインターフェース機器、防衛・宇宙用センサーモジュール、産業機器などを中心に事業を展開してきた。「研究開発部門は自らがイノベーションの源泉となるべく、新たな技術戦略を掲げ、事業領域を開拓する役割を担う」と、中島伸一郎・商品開発センター長は見る。

 中島センター長は、研究開発には連続的に社会トレンドを理解して、その延長線上にストーリーを構築する演繹(えんえき)的手法と不連続的に将来を仮定してそこからバックキャストしてストーリーを構築する帰納法的手法があると指摘。誰もが予測可能な前者で戦略をいくつか描き、それをベースに、後者で得られた戦略を当てはめ、独自性とヒット率向上を期待するのも一つの選択肢という。

 事業化企画には、事業部門や営業部門、マーケッターなどの意見を取り入れつつ修正を進める統合力も重要。その研究開発ステージでは、カオスを好むエンジニア(フロンティア人材)とプロジェクトマネジャー(イノベーター)の役割が極めて重要。イノベーション創出には「多少の非真面目さ(不真面目ではなく)も持ち合わせないといけない」と中島センター長。

 こうした中、先端分野としては、例えばMEMS技術やその応用は、基盤技術の一つとして注力している。ナノプリントや精密印刷技術など材料加工技術と組み合わせ、独自のプロセス技術に拡張。また粒子イオンビーム技術も展開し、金型や加工ツールといった実用化につなげている。

 産業技術総合研究所をはじめ公的機関の進める国家プロジェクトや研究を通じ、単独では参入障壁の高い市場への参画なども推進。文科省関連のプロジェクトでは、東工大や阪大とともに、新しい量子センサー技術の開発を進展させている。コネクタ事業部では東大生産技術研究所と包括連携協定を結び、次世代モビリティー・IoT社会のための共同研究も進めている。

 第5世代移動通信規格5G関連などでは、パッケージ実装の競争に関わるべく、加工技術と材料技術を磨くことで、曲げや振動に耐性を持つチップ実装用のインターポーザーを開発。新たな電気接続技術を提案している。

 IoT関連では、モジュールやシステム開発、ソフトウエア開発の必要性が高まっている。センサー周辺のシステム開発では、人工知能(AI)を用いた機械学習による高度な解析も必要。NECグループによる技術連携も進めている。