2021.08.18 【コネクター総合特集】中長期成長へ事業戦略強化次世代ニーズに対応
代替エネルギー車用の高電圧コネクター
コネクターメーカー各社は、中長期の成長に向けた事業戦略を強化している。第5世代移動通信規格5Gや、自動車の電子化・電動化、スマートファクトリー化、IoT化などの市場変革が進む中で、携帯端末や自動車、産業機器/インフラ、家電など、あらゆる分野で技術革新や市場革新が進んでいる。現在のコロナ禍も、これらのデジタル変革(DX)の速度を大幅に加速させている。各社は、次世代ニーズに向けたコネクション/接続技術の開発とグローバルマーケティングに努めることで、今後も持続的な成長を目指す。
コネクターのグローバル需要は、世界経済成長の波に乗り、2013年から18年にかけて長期にわたる拡大基調が続いた。米調査会社B&Aのレポートでも、世界のコネクター市場は、17年、18年と2年連続で2桁成長を達成した。
一方、18年秋以降は、米中貿易摩擦を起点とした中国経済停滞や設備投資減退などにより需要が軟化。19年も米中摩擦の長期化に伴う自動車需要や設備投資需要の低迷が続き、年間を通して軟調な状況が続いた。
20年の世界のコネクター需要は、年初段階では緩やかな回復が予想されていたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が市場に大きな影響を与え、20年前半は自動車やFA・設備関連を中心に需要が大きく落ち込んだ。
そうした中でも、コロナ禍による需要減は20年4~5月頃に底入れし、6月以降は徐々に回復。回復が早かった中国市場に加え、7月以降は米国市場も回復し、20年前半の落ち込みが深刻だった自動車関連の需要は米中がけん引する形で夏場以降、顕著に回復した。
加えて、在宅・巣ごもり需要によるノートパソコン(PC)やタブレット端末、ゲーム機需要の拡大や、5Gスマートフォン需要、デジタルシフトに伴うデータセンター(DC)需要の増大なども、20年後半のコネクター需要回復を支えた。この結果、20年のコネクター世界需要は19年比で軽微な落ち込みにとどまった。
21年のコネクター需要は、20年秋以降の回復基調が継続し、好調に推移している。分野別では、生産回復が続く自動車やスマホやPCなどのICT関連需要の増大に加え、今年に入りFA関連の需要も急速に回復し、ほとんどの主要アプリケーションで良好な需要動向が続いている。
近年のコネクター市場の成長を支えているのは、分野別では、電子化・電動化が進む自動車や高機能化が進むスマホなどの高機能端末、自動化・省人化ニーズを背景とした産業機器、デジタルシフトや情報通信の高度化を背景としたテレコム/データコム関連など。
民生系では、ウエアラブル端末の成長や、巣ごもり関連での白モノ家電・住設機器の増加もコネクター需要を押し上げている。
足元のコネクター需要は、今春以降も堅調さが継続している。特に好調なのが、今年に入って市場回復が鮮明となってきたFA/工作機械などの産業機器関連。自動車向けも、半導体不足の影響を受けながらも好調な受注状況が継続している。
ICT関連は、中国系スマホで一部在庫調整が進んでいるが、全体としては堅調に推移している。今年後半のコネクターグローバル需要も、半導体・材料不足や新型コロナのデルタ株拡大の懸念はあるものの、全般的には好調さが続く見通し。
コネクターの主要マーケットである自動車、産業機器、携帯端末、通信インフラなどの産業分野では、いずれも大きな技術革新が進行している。こうした技術革新の進展が、今後もコネクター技術の高度化を促進し、コネクター需要を中長期で活性化していくことが予想されている。
多くのコネクター企業が重点を置く自動車は、ADAS/自動運転技術や電動化へのシフトが、新たな高付加価値コネクターの需要を創出する。
産業機器/ロボット関連では、人工知能(AI)やコネクテッドインダストリーなどをキーワードとした技術革新が、付加価値の高いコネクターの需要を押し上げる。5G基地局やDC需要の増加も、産機用コネクター需要を増大させる。
コンシューマー系では、5Gスマホの普及本格化やウエアラブル機器の成長が、コネクター需要のけん引につながると期待されている。
医療機器/ヘルスケア関連や、4K/8K放送システム、画像認識技術の高度化による需要増も期待される。
IT・エレクトロニクス技術が高度化し、多様な産業分野で電子化やネットワーク化、大容量高速伝送化が進む中、接続技術の重要性は一段と増していく。コネクター各社は、中長期視点での技術戦略やマーケティング活動を強化し、顧客へのソリューション提案力を高めることで、今後も安定的な成長を目指す。