2021.09.22 【関西エレクトロニクス産業特集】モビリティー万博に向け「空飛ぶクルマ」実現へ

万博に向けて空飛ぶクルマの開発も加速

 関西ではMaaSの実証実験が各エリアで進んでいるが、実用化レベルでのサービスが開始されるなど交通に関する新たな取組が進んでいる。2025年の大阪・関西万博に向けても「空飛ぶクルマ」の実現に向けた動きもスタート。地域だけでなく、都市部においても新たな移動の在り方が示し出されている。

 交通事業を展開するWILLERは6月末から月額定額料金5000円で、家族で乗り放題になるAIシェアリングモビリティーサービス「mobi」のサービスを京都府京丹後市で始めた。街の人々と車をシェアし、新しいスタイルの「共有交通」を目指す。

 サービスエリアは京丹後市の峰山町、大宮町エリアの半径2キロメートル圏内。特徴は①呼ぶと平均10分で迎えにくる②AIルーティングにより、客の予約状況や道路状況を考慮して、最適なルートで目的地まで移動できる--など。

 高齢者など誰もが簡単に操作できるアプリケーションのインターフェースを採用した。同社の村瀬茂高代表取締役は「200世帯、30法人の利用になれば採算が取れる。2台目のマイカーをなくして利用してもらいたい」と話す。

 京都府伊根町、デンソーなどは9月から地域情報配信システム「ライフビジョン」を活用したデマンド交通予約機能の実証実験を開始した。期間は10月31日まで。今回の実証実験で得た知見を生かし、来年4月から本格的なデマンド交通サービスを開始する。

 デンソーが開発・提供するライフビジョンは、タブレット端末やスマートフォンを通じて自治体から住民へさまざまな情報を配信する地域情報配信システム。人口約2000人、約900世帯、高齢化率が46%となっている伊根町の高齢者の町内移動や小中学生の登下校など、路線バスでは対応できなかった細やかな移動ニーズに対応する。

 住民は全戸に配られたタブレット端末から乗車予約を行い、EV車両に乗って町内の目的地まで移動することができる。今回の実証実験を通じて、伊根町が予定している本格的なデマンド交通サービス提供に向け、運用の課題出し、改善を図る。

 空飛ぶクルマを開発するSkyDriveと大阪府、大阪市は14日、空飛ぶクルマの実現に向けた連携協定を締結した。25年の大阪・関西万博での実用化を目指す。

 SkyDriveの空飛ぶクルマは、昨年8月に「有人機 SD-03」で有人飛行試験に成功。今年の8月末には大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスの実現を目指し、大林組、関西電力、近鉄グループホールディングスなど5社共同で「空飛ぶクルマによるエアタクシー事業性調査」を実施することも発表。空飛ぶクルマの実用化に向けて動きを強めていた。

 直近では10月に小型無人機での実証実験を実施。年内には認知度向上を目的とした一般向けセミナーも開催予定。来年以降にデモフライト、24年に実用運転、万博では一般の人が乗れるよう開発を進める。

 同社の福澤知浩CEOは「大阪湾岸エリアには海遊館やUSJがあり、施設への移動手段として活躍できれば。将来的には京都や瀬戸内エリアなどへの移動手段として空飛ぶクルマを推進したい」と語った。