2019.12.10 【ルームエアコン特集】IoT連携が一層加速 寒冷地への展開も

暖房商戦はじっくりと商談がしやすい。高級機の提案に力が入る

ルームエアコンの月別国内出荷推移ルームエアコンの月別国内出荷推移

 年末商戦に向けてエアコンの提案が活発化している。本格的な暖房商戦に突入し、付加価値の高い機種の提案に力が入っている。今年はIoT対応した機種も多く、快適性の実現につながる、新たな角度からの提案も売り場では進んでいる。

 今年度における国内のエアコン出荷台数は、7月に長梅雨の影響はあったものの、上期としてはデータが確認できる1972年以降で過去最高となる630万8000台を記録した。

 エアコンは、ここのところ毎年高水準を継続しており、昨年の猛暑の記憶も新しかったことから全体的な出荷が伸びた格好だ。8月下旬になると10月の消費税増税前の駆け込み需要が本格化。9月にはエアコン以外も含めて国内の家電市場でその影響が顕著となって表れ、実販でも市場の活性化につながった。

 一方、当初から想定されていたが、10月以降は若干苦戦気味だ。エアコンの出荷台数は消費増税の反動や台風の影響で10月は大幅にダウンしている。ただ、「10月1-2週目は駆け込み需要の反動が出ていたが、後半になるにつれて戻ってきた」(エアコンメーカー幹部)との意見も多く、反動減からの復調は早いとの見方が強い。前回の増税(14年4月)時には早くから駆け込み需要が発生しており、特に14年に入ってからは高水準が続いていた。その分、反動の影響も大きく、需要停滞も長引いた。

 しかし、今回は駆け込み需要の〝ヤマ〟が高くない代わりに〝タニ〟も深くないようだ。政府が実施している5%のポイント還元事業もプラスに働いており、市場の停滞感の払しょくに一役買っている。

 特に、これからは年末商戦が最盛期を迎える。「エアコンを含め暖房機器は昨年以上に売れている」(ヨドバシカメラマルチメディアAkiba・堤康平店長)と、家電量販店でも客足、売上げともに盛り上がってきている。

 メーカー各社からは新製品が発売されており、快適、清潔、省エネを実現する機能や性能がさらに向上されている。今年はIoT連携が一層加速し、量販店の店頭でもそれを訴求する展示や実演が目を引くようになった。スマートスピーカと連携した音声操作は、リモコン操作からの解放にもつながるため利点が多くあり、訴求が強くなっている状況だ。

 毎年の傾向を見ても10月以降の下期は、エアコンの暖房能力の向上によって年々需要が高まっている。北海道や東北などの寒冷地への展開を目指した専用機も各社ラインアップを充実させており、暖房シーズンにおける拡販に向けた体制を整えている。寒冷地仕様のエアコンは暖房能力が高いため、標準地でも冬場には引き合いが強まる。

 加えて、子ども部屋や寝室など個室への導入を含めると、エアコン市場は全体の底上げがまだ可能な状況にある。新規を含めて参入メーカーも多く、シェア争いは厳しさを増している。

 各社の上位機はメーカーごとの考え方や特徴が徐々に出やすくなっている。エアコンに求められる基本性能は快適、清潔、省エネの三つ。これらを中心に据えた上で、どのように性能を高めたり新機能を盛り込んだりできるかが、市場からの支持につながる。

 新たな機能や性能は、丁寧な説明でなければ来店客に伝わらない側面もある。そのため、売り場での提案力は重要。暖房商戦では夏商戦と異なり、来店客が売り場に殺到する状況ではない。時間をかけた商談がしやすく、腰を据えた提案により各社の特徴が打ち出された高級機の販売の盛り上がりが期待されるところだ。

【ルームエアコン特集】目次

●IoT連携が一層加速 寒冷地への展開も
パナソニック 「エオリア」Xシリーズ ナノイーXでカビ抑制
ダイキン工業 「うるさらX」新形状フラップ採用で包み込むような柔らかい気流
富士通ゼネラル 「nocria」Xシリーズ 複眼輻射センサーを搭載 AI連携で床温度検知し吹き分け
コロナ 「Wシリーズ」最高55度の高温風 素早く足元まで35度に暖め