2022.03.04 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<77>アフターコロナのDX&ローカル5Gを占う⑤

 先日、興味深い協働の誘いがあった。「在宅でも構わない」というので話を聞いてみると「場所は拘束されないが時間は拘束される」とのこと。相手が見えないだけに、長時間労働を防ぐための監視は必要なのだが--。

見えない目で監視

 クリエーティブな仕事の場合、決められた時間内に必ずしもアイデアが浮かんでくる訳でもない。ネットワーク経由の〝見えない目〟で常時監視されるストレスで生産性が低下する恐れもあるだろう。

 さて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の資料「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」の中に、5Gや仮想現実(VR)/拡張現実(AR)などのデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)の普及による新しい価値観として「リアルとバーチャルの融合による場の共有・臨場感」が挙げられ、その新しい価値観によって生まれる新しい仕事の区分けとして「エッセンシャルワーカーとリモートワーカー」が挙げられている。

 エッセンシャルワーカーとは、医療や介護、運送・配送など、社会インフラ維持に必要不可欠なリアルな現場から離脱できない業種で、テレワークができない。感染リスクやクレーム対応などを伴うので、身体的・精神的な負担への配慮が必要であるとしている。

 それに対して、リアルのオフィスなどから離れ、オンラインを活用しテレワークをするリモートワーカーには、裁量制・成果主義などのへ変革とともに、在宅勤務がもたらすストレス対応が必要であるとしている。

 ハーバード大学医学部准教授で「アメリカ鬱(うつ)・不安障害協会」会長のルアナ・マルケス博士によると、今世界中で「コロナ鬱」が急増しているという。特に、緊急事態宣言発出時の強い行動制限を伴うテレワークでは、同僚などとのリアルな関わりが遮断されてしまう。

 通常時、パソコン(PC)のスイッチをオフにさえすれば、「仕事モード」から〝飲みニケーション〟などの「オフモード」に切り替わる。しかし、在宅勤務ではその「切り替え」がうまくできない。

ローカル5G×ビジネスメタバース(VR/AR)によるテレワーク

 仕事とプライベートの境目が曖昧となり「コミュニケーション不足」や「コラボレーション不足」が起こり、ストレスが増し「孤独」を感じるようになる。同博士は「孤立状態」に陥る回避方法として、バーチャル空間での人とのつながりを勧めている。

臨場感を味わえる

 そこで前回紹介した、VR/ARを駆使したメタバースのビジネス版である「ビジネスメタバース」が一役買う。アバターを介して社員がコミュニケーションできるバーチャルオフィスだ。

 例えば「oVice(オヴィス)」というクラウドサービスはバーチャルオフィスの新しいサービスだ。PC上の〝見える〟仮想オフィス空間において自分のアバターを動かして同僚のアバターに近づけることで簡単に話し掛けられるなど、現実のオフィスにいるような臨場感を味わうことができるらしい。「Zoom」など外部のコミュニケーションツールとの連携もでき、会議も行える。

 快適なメタバースの実現には、端末の処理性能と通信インフラの整備も不可欠だ。ローカル5Gが整備されると、通信がボトルネックとなる画像や音声の乱れはなくなる。仮想空間でストレスのない快適なコミュニケーションができるようになるだろう。(つづく)

 〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉